・金融引き締め本格化 | 矢口新

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☆金融引き締め本格化

日本が連休中の先週、FRBは政策金利を0.50%引き上げ、0.75~1.00%とした。保有資産を圧縮する「量的引き締め」の6月開始も決定した。0.50%の引き上げ幅は2000年以来の大きなものだ。

また、BOEは政策金利を0.25%引き上げ、1.00%とした。2月の会合では量的金融緩和策として買い入れた債券の再投資停止を決め、保有残高の自然減に着手している。今回、1.00%への利上げを受け、保有資産を金融市場で売却することを含むより積極的な量的引き締めを検討する方針を確認した。政策委は国債の売却戦略を8月の会合で示すよう事務方に指示したとされる。

先週にはその他の中央銀行も利上げを行った。私が把握しているものだけでも、オーストラリアは政策金利を0.25%引き上げ、0.35%とした。インドは政策金利を0.40%引き上げ、4.40%とした。ブラジルは政策金利を1.0%引き上げ、12.75%とした。チリは政策金利を1.25%引き上げ、8.25%とした。

加えて、ブルームバーグ・エコノミクスの分析によれば、日米英カナダの中銀とECBの政策担当者らは、年内にバランスシートを合計約4100億ドル相当圧縮する見通しだ。これらの中銀はバランスシートを昨年2兆8000億ドル相当積み増し、新型コロナ禍発生以降では8兆ドル余り拡大させており、著しい方向転換となる。


各国の中央銀行がこのように金融引き締めを急ぐのは、世界的なインフレ率の上昇に対応したものだ。

これまでも住宅価格や家賃の急騰などにより、好景気の米国でさえホームレスが急増するなどインフレの弊害が目立っていたが、このところはロシアのウクライナ侵攻や、世界的なロシア制裁のために、エネルギー価格や食料価格の高騰が見られている。

ウォールストリート・ジャーナルは、食料価格の高騰により、貧困家庭による食料支援団体への需要が増大しているだけでなく、食料支援団体の財政が逼迫してきていると取り上げた。


(以下に一部引用、URLまで)

フードバンクへの需要が再び増大。インフレが家計を圧迫。フードバンクは食料価格上昇による需要の増加に応えようと懸命に努力している。食料価格の上昇は家計とフードバンク組織自体の予算を圧迫している。

デトロイト中心部を担当しているフォアガットン・ハーベストによれば、同フードバンクが担当する異なった地域で、12月以降需要が25%から40%高まった。3月だけで、需要は前月から30%増だった。

インフレ率が40年来の高水準となったことで、米国の家計は様々な製品やサービス価格の上昇に危機を感じている。食料品店の食品価格は3月に前年比で10%上昇した。レストランでの食事代は2021年3月から6.1%上昇したことが、労働省による直近の消費者物価指数で分かった。

全米200のフードバンクと6万の食料配給所や給食プログラムを運営するフィーディング・アメリカの最新の調査では、2月に傘下のフードバンクの85%が前月から食料支援が増加または横ばいだった。これは前回1月の調査から約20%増となる。
このプレッシャーの前は、新型コロナウイルス・パンデミックによる困難な2年間だった。

参照:Food Banks Are Serving More People Again as Inflation Squeezes Budgets 


昨年末までの米株高は、基本的には金利低下と、政府と中央銀行双方による巨額の資金供給によるものだ。そして、そうした大判振る舞いは株価などの資産だけでなく、ほぼすべてのものの値上がりに繋がった。端的に言えば、大判振る舞いが行き過ぎたのだ。

そこで、FRBは金融政策の正常化を急いでいる。その結果、先週のS&P500株指数は5週連続で下落、11年第2四半期以降で最長となった。ナスダック総合指数も5週連続安と、12年第4四半期以降で最長となった。


一方で日銀は、急激な円安にも関わらず、連休前に超緩和的政策の継続を決めている。もっとも日経平均の高値は2021年の2月と9月がダブルトップなので、株価を買い支えてきた日銀としては緩和を止めることができないのだろうか?

これらについての考察は「ドル円130円超えなのに、日銀はマイナス金利政策を継続」として、次回に詳しく取り上げる。

今回は、昨年来メルマガやブログで配信してきた関連するコメントのさわりだけを引用しておく。


2021-05-24 05:58:48
株価4万円予想は撤回

 

(前略)

日本取引所グループが発表している株式の投資家別売買動向によれば、2005年1月から2021年4月にかけて、信託銀行は1.9兆円の買い越し、生損保は7.9兆円の売り越し、都銀等は5.8兆円の売り越し、他金融は2.0兆円の売り越し、投資信託は1.2兆円の売り越しだった。

信託銀行が買い越しなのは、GPIFなどの年金勘定が含まれているためで、自己勘定では相当量の売り越しだと見ていていいだろう。

このことは、我々の資産を運用している機関投資家は軒並み売り越しで、買い保有で運用する年金を含めてさえ、総額15兆円の売り越しなのだ。また、個人投資家はこの期間に47.1兆円も売り越している。このことは、それ以前にそれ以上を買い越していたことを意味している。バブルとは言え、中身のある株式保有があったのだ。

5月13日、三井住友トラスト・ホールディングスが大手金融機関として初めて持ち合いなど政策保有株をすべて売却すると発表した。今後、同行保有の約1兆4000億円(時価ベース)が時間の問題で全額売却される見通しとなった。

一方、2005年1月から2021年4月にかけての買い越しは、プライマリー市場にからむ証券自己勘定を除けば、事業法人が23兆円の買い越し、他法人が4.7兆円の買い越し、外国人投資家が31.9兆円の買い越しだ。加えて、日銀が36.1兆円買った。

自社株買いを含む事業法人の買い越し額は2019年に4.2兆円と盛り上がりを見せていたが、コロナ以降は急速に萎み、むしろ売り越し基調となっている。また、日銀はこの4月と5月で701億円しか買っていない。

日本株の下値はまだ固い。下がると年金が買えるようになるし、日銀に暴落を静観する選択肢があるとは思えないからだ。

しかし、上値を誰が買うのか? 年金は株式保有比率を守るために上値を売ってくる。コロナ後の事業法人の余力は限られている。日銀は現状のレベルですら買ってこない。ここに金融機関から最大30兆円を超える政策投資の解消売りが出てくるとなると、外国人投資家ですら荷が重いのではないか?

私はここ10年ほど日本株は上昇すると言い続け、ここ数年は4万円に到達する可能性に触れてきた。しかし、10%への消費増税に次ぐコロナ禍、「欲しがりません。勝つまでは」と際限のない自粛を要請する政策、タガが完全に外れた政府の累積赤字と債務残高などを鑑みると、前言を撤回せざるをえない。

とはいえ、日本株の下値の堅さと世界的なカネ余りを鑑みれば、上値はまだある。まだあるとは思うが、海外に引っ張られる形のあだ花でしかない。上げれば今度こそ中身のないバブルなのだ。盛り上がって急騰するようなことがあれば、利食いの売りを考えてもいいだろう。

(後略)


2021-07-19 08:18:57
米連銀は、火に油を注ぎ続けるのか?

 

(前略)

一方、米連銀のパウエル議長は「米経済は資産購入の縮小を開始できるだけの進展をまだ見せていない」と強調。「インフレは一時的なもの」で、警戒感を持ちながらも緩和的な金融政策を続けるとした。


(中略)

バイデン政権は大規模な財政出動の財源を賄うため、大企業や富裕層に増税を課すことはあっても、低中所得層に負担を強いることはないと公言してきた。

しかし、賃金の上昇が物価の上昇に追いつかず、明日の住居、明日の生活に脅える人々が急増していることは、大規模な政府の財政出動や中央銀行の金融緩和を事実上負担しているのは低中所得層であることを強く示唆している。

(後略)


2021-12-20 07:45:39
金融引き締めに転じた世界


(前略)

英中銀が利上げした。政策金利を0.15%引き上げて、0.25%とした。オミクロンよりインフレを恐れたとして、2018年8月に0.25%引き上げて、0.75%とした時以来の利上げとなった。

前回はその後のコロナショックで、2020年3月に0.10%に引き下げることになったが、今回は利上げサイクルの始まりだと見なされている。

先週、利上げした諸国は、他に、ロシア、ノルウェー、ハンガリー、メキシコ、コロンビア、チリなどだ。これらの国々は連続の利上げで、既に利上げサイクルに入っていると言える。いずれも、インフレ対策だ。

国連食糧農業機関が算出する世界11月の食料価格指数は1年前より約3割高い。

ここで、日本経済についての質問だ。

(中略)


回答5:MMTはこうして終わる?

財務省が提供する参照図05では、「ハイパーインフレーション発生、預金封鎖、新円切替、財産税、戦時特別補償税等による債務調整」とある。何のことはない。政府は国民の預金まで没収した上に、ハイパーインフレーションで現金の価値をなくしたのだ。

(中略)


このことは、物価上昇がなく、外貨債務のない国は、兌換義務がない通貨をどんなに印刷してもかまわないという新(珍)通貨理論MMTは、こうして終わることの示唆ではないか?

また、図05で注目して頂きたいのは、債務が急増!とハイライトした辺りだ。

前図04のように、税収の伸びが止まっても、歳出が止まる訳ではない。ODAなどの対外援助も、昔の豊かだった頃と、基本的には変わらない。収入が減った家計でも、今まで通りの生活が止められないのと同じだ。

つまり、こうした政府債務の急増は、税収が1990年度にピークをつけたことで、決定づけられたと言っていい。

(後略)


2022-03-22 05:59:08
日銀は利上げできるか?


(前略)

もっとも、米英の利上げが去年から決まっていたように、ブラジルが9会合連続で利上げしているように、日本の2月の企業物価指数が前月比+0.8%、前年比+9.3%だったように、インフレ率の上昇はロシア制裁によるものではない。ロシア制裁が加速させるだけだ。

インフレの主要因は世界的に長く続いた超緩和的な金融政策と、超大型の財政支出だ。その点では、十分に予測されていたインフレなのだ。それに加えて、円安も日本の輸入物価を上昇させる。

2022年1月と2月の貿易赤字は合わせて2兆8618億円と、2カ月間で2021年通年の赤字額1兆4759億円の2倍近くとなった。貿易赤字とは、輸入に要する円売り外貨買いが、輸出で得た外貨売り円買いを金額で上回るということなので、根っこの円安圧力となる。

実際に、2010年まで貿易黒字でいた間は根強い円高圧力があったが、2011年に天然ガス輸入急増などで赤字に転じてから、円高トレンドは終わった。2015年以降の貿易収支は概ね均衡していたが、2022年はエネルギー価格や食糧価格の上昇などで、大幅な赤字となる可能性が出てきた。

これは円安を示唆し、更なる輸入物価の上昇、コスト高、高インフレを示唆する。

(中略)


仮に利上げをすればどうなるか?

インフレは海外発だ。日本にはそれほど需要がないので、利上げでさらに需要を減らしても、インフレは止められない。

また、利上げしても貿易赤字は減らず、多少の利上げでは海外との金利差も縮まらない。つまり、円安も止められない。

このことは、利上げを含めて、日銀の金融政策ではもはや日本経済を救えないということだ。

(後略)


次回は、「ドル円130円超えなのに、日銀はマイナス金利政策を継続」を詳しく解説する。

 

 

 

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