・米連銀、金融引き締め加速へ | 矢口新

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☆米連銀、金融引き締め加速へ

インフレ率の高まりを受けて、米連銀の金融引き締め政策が加速する見通しとなってきた。これが示唆する今後の展開を、5つの図表データで考えてみる。


これで米国の政策金利は2022年末には1%に届き、2023年末には2%を超えて来る見通しで、もっと急激な利上げを主張する金融政策担当者たちもいる。

米連銀の政策金利の下限は2018年12月から2019年6月まで2.25%だったので、近い将来に、その水準を上回る可能性も出てきたことになる。

参照図01:主要国の政策金利の推移(出所:各国中銀のデータから作成)
  

図01で分かるのは、2020年初めまで概ね低下してきた主要国の政策金利が、2021年に入ってから、上昇トレンドに転じたことだ。

2021年に利上げを行った国は、私が把握しているだけで、ロシア、ハンガリー、ポーランド、ノルウェー、ニュージーランド、韓国、南アフリカ、メキシコ、コロンビア、ブラジル、チリ、ペルー、アルゼンチンなどで、利下げしたのは、トルコと中国だけだ。

この図でもう1つ興味深いのは、2007年半ばから2008年末にかけてで、サブプライム・ショックで急激な利下げを始めた米連銀に対し、ECBなどは2008年後半に利上げすら行ったことだ。

理由は、ドイツなどのインフレ率の高まりのためだが、これがサブプライム・ショックの余波を受けて住宅不況に苦しんでいた諸国を直撃し、後の欧州ソブリン債務危機に繋がった可能性がある。これは、以下の拙著で述べている。

参照:日本が幸せになれるシステム: グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)


また、これまでの米連銀の金融政策決定会合では、連銀資産拡大のペースを緩めるテイパリングを加速させて3月末に資産拡大停止、つまり量的緩和の終了をさせることは既に決めていたが、前回の会合では、資産圧縮開始の時期やスピードについても議論された。

資産圧縮とは、量的緩和として購入してきた米国債や住宅ローン担保証券を市中に売却することで、市中から資金を吸収することだ。つまり近い将来、金利、資金供給量の両面から、米連銀は金融引き締めを行うことになる。

参照図02:米連銀の総資産推移(出所:米連銀)
  

図02の米連銀の総資産の推移は、サブプライム・ショックの時期から始まっている。このことで、サブプライム・ショックという住宅バブルの崩壊が、米国の金融政策の歴史の上で、如何に大きなものだったのかが推測できる。

とはいえ、その後も米連銀の資産は8000億ドル程度で推移し、急増し始めるのはリーマンショック後だ。つまり、5.25%からほぼ0%に急低下させた政策金利では、リーマンショックを防げずに、慌てて未曽有の量的緩和を始めたことが見て取れるのだ。

コロナ・ショックでは更に急増し、連銀資産は約8.8兆ドルと、リーマンショック前から10倍以上に拡大した。

この頃、日銀の資産も同様に拡大する。ECBやスイス中銀などは、歴史上初めてのマイナス金利政策を導入する。日銀はこれも導入する。

このことは、今の我々が見ている主要国の金融政策は、10数年前までは誰も想像しなかったような前代未聞のものだったことを示している。

それが「正常化」の方向へ向かい始めたのだ。

米国の金融政策の正常化で予測されることの1つは、大金融相場、いわゆるカネ余り相場が終わることだ。

今の世界的な株高は、2009年初めの米量的緩和から始まったからだ。

参照図03:ニューヨーク・ダウと米連銀資産の推移(出所:米連銀とSBIチャートから作成)
  

図03で分かるのは、米連銀の資産が10倍以上となる中で、ダウは5倍近くに上昇したことだ。この期間に上げたものが株価だけではないことを鑑みると、納得のいく上昇幅だと言える。

また、この図で分かるのは、2015年12月に始まる利上げ時期も、2018年からの資産縮小の時期も、株価は上げ続けたことだ。利上げ前の2015年こそ株価の上値は重かったが、利上げでは月足の下髭が出ただけで、上昇に転じている。

このことは、これから来る米金融政策の「正常化」でも、少なくともしばらくは、株価はしっかりとしている可能性を示唆している。

とはいえ、実のところ、この期間に株価を押し上げた主力は米企業による自社株買いだ。そして、企業の余剰資金を見る限り、それは今後も主力の1つであり続けることを示唆している。

また、インフレや利上げで最も価値を失うのが債券であることを加味すると、債券市場からの大量の資金流入が予想され、株価は今後も上昇し続けると見ていても良さそうなのだ。もっとも、赤字企業やネット債務の大きな企業は苦戦する可能性がある。

そのインフレだが、2015年12月に始まる利上げ時期も、2018年からの資産縮小の時期も、消費者物価指数は上げ続けた。

参照図04:米都市部消費者物価指数(出所:米連銀の資料に書き込み)
  

図04を、これまで見てきた米連銀の資産や株価と見違えた人はいなかっただろうか?

米のインフレ率は量的緩和に先立つ利下げ時期に上昇し、リーマンショックでいったん下落し、量的緩和の開始で上昇トレンド入りしている。

先の拙著で解説しているが、日本でも金融緩和では消費者物価の上昇圧力が見られている。しかし、その後の消費増税やリーマンショックで下落に転じてきたことが分かっている。

日本は金融緩和と増税という、車に例えればアクセルとブレーキを同時に目一杯踏み続けて来たために、いつまでたってもデフレから前に進むことができず、無駄にガソリンを消費し、タイヤを含む自動車そのものを破壊寸前にまでしてしまったのだ。

では、2016年以降の米国の消費者物価は、どうして金融政策が引き締めに転じた後も、上げ続けたのだろうか?

1つには、そこがインフレの恐さだ。一度火が付いたインフレを鎮静化させるのが困難なのは、これまでの歴史を見るまでもなく、現在でもトルコやアルゼンチンでは、相当の高金利にまで引き締めても、インフレが収まっていない。

米国の場合は、引き締めに転じたといっても、金利は下限が2.25%と歴史的にはまだまだ低金利だった。また、連銀資産も4兆ドルほどと、リーマンショック前の4、5倍もあった。これでは、簡単にはインフレは収まらない。

そして、もう1つは財政面だ。

参照図05:米個人所得と、政府の財政支出の内訳(出所:米政府データラボとウォールストリート・ジャーナル)
  

米政府の財政支出が物価を押し上げている可能性が高い。日本政府ほどではないが、米政府も収入以上に支出を続けており、財政赤字は膨らむ一方だ。図05で目立つのは2020年、2021年のコロナで止めた経済の所得補償の伸びだ。実際に、米国人の個人所得は、その時期に失った賃金以上の補填で大きく伸びた。

それが、バイデン大統領が、コロナ後にそれ以前より経済が大きくなったのは米国だけだ、と豪語することができる大きな要因だ。

とはいえ、そうした大判振る舞いで最も恩恵を受けたのが富裕層で、中間層以下が受けた恩恵は、インフレで相殺されかけていることを鑑みれば、豪語とは裏腹に支持率は低下してきている理由も分かるような気がする。

 


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