・残念に思うこと | 矢口新

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明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。


☆残念に思うこと

オンラインの東洋経済で、野口悠紀雄一橋大学名誉教授の以下のコメントを目にした。


(以下に部分引用、URLまで)

「2021年の1人当たりGDP(市場為替レートによるドル表示)において、日本は4万0704ドルで、世界第24位だ。

世界第1位のルクセンブルク(13万1301ドル)に比べると、3分の1以下にすぎない。

アメリカ(6万9375ドル)の58.7%、アジア第1位シンガポール(6万6263ドル)の61.4%でしかない。ドイツ(5万0787ドル)、イギリス(4万6200ドル)に比べても低い。

韓国は3万5195ドルで日本より低いが、後述のように成長率が高いので、いずれ抜かれるだろう。

日本より下位にあるのは、ヨーロッパでは、旧社会主義国の他は、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャしかない」


「アベノミクスが始まる直前の2012年には、順位が低下したとはいうものの、世界第13位。第10位のアメリカの95%だった。第20位のドイツより12%高かった。

つまり、いまほどに国際的地位が低くなったのは、アベノミクスの期間のことなのである。

こうなったのは、第1には円安が進んだからであり、第2には、世界が成長するなかで日本が成長しなかったからだ。

自国通貨建て1人当たりGDPの2000年から2021年の増加率をみると、つぎのとおりだ。

日本が4.6%、アメリカが91.0%、韓国が188.0%、イギリスが78.5%、ドイツが64.2%。

したがって、時間が経てば、日本は他国に抜かれていくことになる」


「円が増価し、日本の国際的地位はみるみる向上した。1人当たりGDPで見た日米間の豊かさの差が1980年代から1990年代に縮小したのは、表1で見たとおりだ。

しかし、その後、日本の地位が下がり、日米の相対的な豊かさの比率は、1970年代末の水準に戻りつつある。」


「自国の問題点を強調するのは、それを改善したいからだ。他国の良い点を指摘するのは、それが自国を改善する参考にならないかと考えるからだ。

事実を正しく認識することは、事態を変えるための第1歩だ。

そして、1960年代の謙虚さを取り戻すことが、日本再生のための不可欠の条件だと思う」

参照:日本が国際的地位を格段に下げている痛切な事実



同じようなことは、私も自著で述べている。


6.世界経済のミラクルは、日本から中国に変わった

表01:1989年のトップ10経済国のGDP、対2019年(出所:国連統計局)
  

表01は1989年のトップ経済10カ国のGDPを、2019年のGDPと並べたものだ。順番はアルファベット順で、数値は現在の米ドルで調整されている。念のために日本語で表記すると、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スペイン、英国、米国、そして世界全体の順となっている。

日本が1989年からの30年間で1.66倍の成長に留まっていた間に、世界は4.23倍成長したことは前述した。

1989年のトップ経済10カ国を、2019年の経済規模に並べ替えて30年間の成長率を見ると、米国3.80倍、中国31.43倍、日本1.66倍、ドイツ2.76倍、英国3.05倍、フランス2.65倍、イタリア2.16倍、ブラジル4.92倍、カナダ3.07倍、スペイン3.36倍となる。世界平均の4.23倍に比べると先進国の成長率は鈍いが、なかでも日本が圧倒的に見劣りするのが分かる。一方、中国の成長率は文字通り桁違いで、日本が足踏みしている間に日本を追い越し、そのまま先に行ってしまった。

図06:1989年のトップ10経済国のGDP、対2019年(出所:国連統計局)
  

図06は表01で見た10カ国の1989年と2019年の名目GDPを、左からアルファベット順に並べたものだ。青色の棒グラフが1989年の名目GDP、オレンジ色が2019年のものだ。単位は兆ドル。1989年当時世界2位だった日本は米国の53%の規模だったが、2019年には24%に低下した。代わって中国が2位となり、今では日本の2.82倍にもなっている。

このような急速な成長を見ると、もしかすると元高による嵩上げ(かさあげ)だと思われる人がいるかも知れない。私自身がそれを疑ったので、国連統計局の数値をあたってみた。

図07:中国の名目GDPの推移・元建てとドル換算、1989年~2019年(出所:国連統計局)
 

図07は1989年から2019年までの中国の名目GDPの推移を元建てと、米ドル建てで並べてみた。2019年の名目GDPは元建てで100兆元に迫り、米ドル建てでは14兆ドルを超えたことが見てとれる。成長率はそれぞれ56.7倍、31.4倍となった。このチャートからは、ドル元レートのチャートを見るまでもなく、この間に中国元は高くなるどころか安くなったことが分かる。

世界経済のミラクルは、日本から中国に変わったと言える。その中国は日本がどうして突然ミラクルからミステリーとなったのかを学習したと言う。ここでは本書の主題から逸れるのでこの点には言及しないが、他国の助言を受け入れて自分を見失ったなら、健全な成長はおぼつかないというようなことだ。またこのチャートからは、日本が円高に苦しんだような海外からのプレッシャーから、中国はうまく逃れてきたことが分かる。

私は日本のシステムが素晴らしいとは思っていない。悪いところ、改良すべきところはいくらでもあるだろう。しかしその一方で、諸外国のシステムが日本よりもそれほど優れているとも思えない。少子高齢化もほとんどの先進国に共通した問題だ。ところが、ほぼ世界中が着実に成長していくなかで、日本の経済規模のピークは1997年度のままで止まったのだ。税収に至っては1990年度が実質的なピークだと言える有様だ。

図08:日本と世界の名目GDPの推移(出所:国連統計局)
  

図08は日本経済が最初にピークをつけた1997年から2019年までの日本と世界のドル建てでの名目GDPの推移だ。この期間に世界は1.76倍に成長したが、日本はわずか15%増だった。

つまり日本がグローバル化を目指し、他国のシステムを取り入れようとしはじめてから、経済の転落が始まったとも言える。とはいえ、具体的に日本経済を破壊したのは税収増が見込めない税制だとみている。

私は2期目の安倍政権が誕生したときのポスターを覚えている。それには「日本を取り戻す」とあった。そのとき私は、それが昔の輝かしい日本経済を意味するものだと思い、それなりに期待した。

しかし安倍氏が残したものは、個人的な偉業と、数々の醜聞と、2回の消費増税と、停滞したままの経済と、前述した数々の大問題をつくり、途中で投げ出して次の世代に先送りしたことだけだった。安倍氏が3期目も狙っているという観測を耳にするが、同氏はそれほど愚かだろうか? 一度逃げた人間が、ここまで悪化させた状況を引き受けるとは思えない。

下の表02は、1989年のトップ10経済国のGDPを、2019年のものと並べた表01を、1人当たりのGDPに直したものだ。

表02:1989年のトップ10経済国の1人当たりGDP、対2019年(出所:国連統計局)
 

表02に見る1989年の日本の1人当たりGDPは最貧国を含めた世界の6.23倍だったが、2019年には3.53倍にまで低下した。一方、経済規模でミラクルとなった中国の1人当たりGDPは世界の10.0%から88.2%にまで急上昇したが、いまだに世界を下まわっている。「2020年版ビリオネア・センサス」による中国のビリオネアの数が世界2位の342人であることを鑑みると、中国版社会主義の実態は貧富の差を著しく拡大したものと言えるかもしれない。

参照:日本が幸せになれるシステム: グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)



「自国の問題点を強調するのは、それを改善したいからだ。他国の良い点を指摘するのは、それが自国を改善する参考にならないかと考えるからだ」とするのは、私も野口悠紀雄氏と同じだ。

しかし、私が残念に思うのは、同氏が「1960年代の謙虚さを取り戻すことが、日本再生のための不可欠の条件」だとしていることだ。

1980年代の日本人は、今の日本人よりも謙虚ではなかったが、世界一を伺うほどの勢いだった。また、スポーツや芸術を含む他の分野でも、世界トップクラスの日本人が必ずしも謙虚だとは限らない。

私が世界の市場で戦ってきたところから抱いている実感は、マインドやセンチメントなどは環境次第ですぐに変わると言うことだ。

1990年から減速を始め、1997年からマイナス成長となったのは、日本人が増長し過ぎたためでも、その頃から突然弱気になったためでもなく、1989年からの税制が経済成長も税収増も止めたためだと見ている。


 


・Book Guide:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?/ How to protect the pension and medical care systems (Arata Yaguchi: Kindle Edition)

 

・Quiz Book:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?: 57 questions to reveal the problems of the Japanese economy (Arata Yaguchi: Kindle Edition)

 

・著書案内:日本が幸せになれるシステム: グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)

 

・著書案内:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、Kindle Edition)
 

・著書案内:日本が幸せになれるシステム問題集・日本経済の病巣を明らかにするための57問(著者:矢口 新、Kindle Edition)




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