・2025年度にプライマリーバランスの黒字化達成は可能か? | 矢口新

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☆2025年度にプライマリーバランスの黒字化達成は可能か?

日本政府は12月24日、2022年度予算案を閣議決定した。一般会計総額は107兆5964億円で、10年連続で過去最大を更新する。

そんなに支出を続けていて、日本の財政は大丈夫なのかというのは、普通の感覚だと思うのだが、現時点では2025年度にプライマリーバランスの黒字化達成目標を変更する必要はないようだ。以下はロイターの記事から。


「鈴木俊一財務相は24日の閣議後会見で、財政健全化目標について、現時点で変更は不要との考えを改めて表明した。布マスクの廃棄方針について、保管費用がかさむためやむを得ず『損切り』する格好と説明した。

政府は2025年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化を達成するとの財政健全化目標について、新型コロナウイルス感染による巨額の財政出動の影響などを検証し、2021年度中に再確認するとの方針を掲げている。現時点で目標変更は不要かとの質問に対して、鈴木財務相はそうだと回答した。

同日閣議決定した2022年度当初予算で予備費に前年度並みの5兆円を計上した理由について、コロナの変異株オミクロン株の感染など不確定要素があり最悪の事態に備えたと説明した。

岸田首相は21日の記者会見で、安倍晋三元首相が昨年春のマスク不足で調達し、保管されたままの布マスク(通称アベノマスク)について、今年度中に希望者に配付し、残りを廃棄する方針を打ち出した。

廃棄に数千万円のコストがかかるとの試算があり、受け止めを問われた鈴木財務相は『保管を続けると保管費用が年々かさんでくるため、この際やむを得ないのではないか。俗な言葉で言えば損切りするということだ』と説明した。」

参照:PB黒字化目標変更は不要、布マスクやむを得ず「損切り」=財務相


アベノマスクとは、マスクが足りない時には配布されず、どこででも入手できるようになってから届いた、小さな布製のマスクだ。そのコストについては、以下を参照頂きたい。

参照:どこが「圧縮」? 886億円のアベノマスク事業/介護施設などへも1億5千万枚/必要性確認せず配付

参照:「アベノマスク」など8200万枚が倉庫に 保管費用は6億円


今年度中に希望者に配付すると言うが、より高性能なマスクがはるかに安価に入手できるので、仮に配送料が無料でも希望者は多くないと思われる。

その意味では、鈴木財務相の「保管を続けると保管費用が年々かさんでくるため、この際やむを得ないのではないか。俗な言葉で言えば損切りするということだ」という決断は、英断といって良いかもしれない。損切りが「俗な言葉」だとは、知らなかったが。


2025年度には、単年度だけとはいえ財政収支が黒字化する見込みだとはいっても、統計がある1975年度から2020年度までの歳出と税収の差額は総額1417.5兆円の赤字だ。2011年度から2020年度までを見ても、平均税収が年53.4兆円なのに対し、平均歳出(コロナの補正予算を含む)は年107兆円だ。

オンラインの日経新聞で、「財務省、プライマリーバランス」で検索したら、以下のような見出しがでてきた。


社会保障費、初の36兆円超 支出抑制 踏み込み不足

補正予算で膨張、無駄招く 監視の目甘い「16カ月予算」

首相、10万円相当給付「迅速に届ける」 水際対策は延長

追加歳出に消える税収増 岸田流補正の「最大の例外」

財政再建の第一歩は「無駄」の排除 中空麻奈氏

基礎的財政収支、自民・公明・立民が公約に明記せず

高市氏、財務次官は「失礼」 「デフォルト起こらない」

岸田新政権、成長呼ぶ財政が急務 規模ありきの予算懸念


政府の「無駄」の排除といえば、民主党政権時代の「仕分け」が印象的だったが、その当時も歳出は一向に減らず、赤字も大きなままだった。

参照図01:政府一般会計の推移(出所:財務省)
 

また、米国に次いで世界二位の累積赤字、GDP比では米国の2倍近い公的債務残高を抱える政府にしては、気前が良すぎる統計もある。第二次所得収支の赤字だ。

第二次所得収支とは、居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す。官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払等を計上する。

この赤字が2013年度から急増、2014年度には1兆9341億円と過去最高を更新した。この時期は当時の安倍首相が積極的に外遊を行っていた時期だ。それが、コロナ後の2020年度には2兆7569億円にもなった。

参照図02:日本の第二次所得収支(出所:財務省)
 


日本政府が、まるでタガが外れたかのように、無駄な出費を重ねているのは疑いがない。とはいえ、私は「財政再建の第一歩は無駄の排除」の時期はとうに過ぎ去り、どんなに無駄を省いても、財政黒字にはならないと見ている。

それは、2022年度予算案の内訳を見ても、明らかだ。

まずは、税収を65.2兆円と見込んでいるが、私は極めて疑わしいと見ている。何故なら、日本の税収が60兆円を超えたのは、1990年度の60.1兆円、2018年度の60.4兆円、2020年度の60.8兆円の3回だけだからだ。

このうち、2018年度の60.4兆円に至ったような未曾有の緩和の継続は期待できず(日銀は既にテイパリングを始めている)、2020年度の60.8兆円を達成したような超大型コロナ補正予算(参照図01の右上)が望めないとすれば、どうしてここから税収を5兆円近くも上乗せできると言うのだろう?

また、未曽有の資金供給も財政支出も、リスクの先送りに過ぎないので、事態の悪化しか意味しない。これを繰り返されては次の世代がたまらない。

問題は、現在の日本政府の最大の財源は消費税だが、21兆円でしかないことだ。所得税収のピークは1991年度の26.7兆円で、法人税収のピークは1989年度の19.0兆円だ。つまり、消費税を導入したことで、景気減速が始まり、上記のように1990年度が総税収の最初のピーク60.1兆円となったのだ。

このうち、消費税は「安定財源」なので、景気が悪化し、家計や企業が苦しくても容赦なく取り立てるが、景気が良くなっても、それほど増えない。つまり、税収を65.2兆円にするには、所得税と法人税に頼るしかないのだが、現状の税率ではそれも不可能だと言っていいのだ。

私は2022年度の現実的な税収は60兆円に満たないと見ている。

ところが、社会保障関係費は36.2兆円あり、国債費は24.3兆円ある。これだけで、60兆円を超える。そして、社会保障関係費はともかく、国債費がここから増え続けるのは確実だ。

参照03:2022年度予算案の内訳(出所:日経新聞)
 


また、上記の見出しで、高市氏が「デフォルト起こらない」とするのは、政府は国民の年金勘定を政府の資産だと見なしており、国債の購入者のほとんどは年金生保銀行といった、国民の資産を預かっているところなので、そこから巻き上げれば「デフォルト起こらない」とするだけなのだ。実際に、1946年に行ったような国民の預金封鎖と増税を繰り返せば、政府は存続できる。

これらのことはすべて、65の図表を用いて、以下の著書で詳しく解説している。

・著書案内:日本が幸せになれるシステム: グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)

・著書案内:日本が幸せになれるシステム問題集・日本経済の病巣を明らかにするための57問(著者:矢口 新、Kindle Edition)


ここでの「日本が幸せになれるシステム」とは、所得税収や法人税収がピークをつけるという、一見すると高負担でいながら、利益に課税するものであったために、日本全体がもっと豊かで、活力もあり、世界的な競争力もあった頃の税制に戻すことだ。


本年も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
よいお年をお迎えください。

矢口 新


 


・Book Guide:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?/ How to protect the pension and medical care systems (Arata Yaguchi: Kindle Edition)

 

・Quiz Book:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?: 57 questions to reveal the problems of the Japanese economy (Arata Yaguchi: Kindle Edition)

 

・著書案内:日本が幸せになれるシステム: グラフで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、ペーパーバック版)

 

・著書案内:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、Kindle Edition)
 

・著書案内:日本が幸せになれるシステム問題集・日本経済の病巣を明らかにするための57問(著者:矢口 新、Kindle Edition)




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