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☆貯蓄は必要か?

貯蓄は、傷病や高齢化、あるいは失業などで、自分が労働というサービスを提供できなくなり、対価としての「お金」が得られなくなった時の備えになるものです。一方で、そうしたセーフティーネットの制度は国が設けており、国民が納めている税金や社会保険料で運営しています。それを社会保障制度といいます。

社会保障制度とは、「国民個人個人のリスクといえる病気やけが、障害、出産、老化、失業などの生活上の問題について、貧困を予防し、貧困者を救済し、生活を安定させるために、国家または社会が所得移転によって所得を保障し、医療や介護などの社会的サービスを給付する制度」となっています。

そこで、私たちの年収からは、所得税の他に個人住民税、社会保険料としての年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料などが差し引かれています。そして、消費税も部分的には社会保障制度の維持に充てられています。

下図01は、日本政府の税収から見た社会保険料の比率で、OECDの平均に比べて1.5倍以上も徴収していることが分かります。

図01:日本の税収構造(出所:OECD)
 

図01は2017年の日本の税収源と、同種の税収源のOECD平均との比較です。青色の棒グラフが日本のもの。灰色がOECD平均です。左のペアから順に、所得税、法人税、社会保険料収入、給与税、固定資産税、消費付加価値税、消費税(付加価値税を除く)、その他となっています。日本には給与税とその他がありません。

この社会保険料と消費税収の1部が社会保障制度の維持に充てられています。これが完璧なセーフティーネットであるならば、(既に税金も社会保険料も納めているので)個人の貯蓄は必要ないと言えます。

では、その必要がないか、社会保障費の内訳を見てみましょう。

図02:社会保障費の内訳と財源(出所:財務省)
 

図02は、左側が2019年度(令和元年度)の社会保障費の内訳、右側が財源となっています。内訳は金額の大きなものから年金、医療、子ども・子育て等、介護となり、財源は保険料と税金が主なものだと分かります。


それぞれの内訳は、どれもが社会保障として重要なものなのですが、なかでも金額が最も大きく、貯蓄が必要かどうかを分かりやすくするのが年金です。

下図03は、高齢者世帯の年金依存度です。高齢者世帯とは「65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯」です。

公的年金の受給開始年齢は原則65歳で、本人が希望すれば60~70歳の間で繰り上げたり、繰り下げたりすることができます。また、政府は2022年4月からは受給開始年齢を繰り下げられる上限を70歳から75歳に引き上げることで、高齢者の就労を後押しすると報道されました。

図03:高齢者世帯の年金依存度(出所:厚生労働省)
 

図03は厚生労働省の2019年度(令和元年)予算ベースの公的年金の規模と役割からのものです。グラフ内の説明書きもすべて厚生労働省によるものです。


図03右側の高齢者世帯の年金依存度では、51.1%が公的年金収入だけで生活していることが分かります。

また左側からは、高齢者世帯1世帯平均の年金収入は公的だけだと204.5万円だということが分かります。

一方で、国民健康保険の患者負担は1人当たり平均で5万9290円ですので、世帯内に患者が1人いれば残る生活費が198.6万円となり、2人いれば192.7万円しか残らないことになります。更にここから何パーセントかの消費税が天引きされているのです。

また、2020年12月、当時の菅義偉首相と公明党の山口那津男代表は75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引上げる対象を年収200万円以上にすることで合意しました。75歳以上の窓口負担はいま原則1割で、年収383万円以上の人は3割。引上げは2022年10月から実施します。22年に「団塊の世代」が75歳以上になり始めるため現役世代の負担を軽減するというものです。

このことは、後期高齢者の患者負担が増すことを意味しています。現役世代もいずれは高齢になることを鑑みれば、負担減だと喜んでいいかどうかは疑問なのです。


ちなみに、公的年金の加入先は職業に応じて異なっています。

1)自営業や農漁業従事者、フリーランスの人などは「国民年金」のみ
2)会社員や公務員は国民年金に上乗せした「厚生年金」
3)会社員や公務員に扶養されている配偶者は、「第3号被保険者」として国民年金に加入します。

制度のベースとなる国民年金の年金保険料を40年間全額納付した場合の、65歳からもらえる老齢基礎年金は、2021年度時点で年額78万0900円、月額にすると約6万5000円です。しかし、未納期間があるためにこの全額を受け取れない高齢者が既に半数いて、現在64歳以下のその予備軍がコロナ以降に急増中です。

これら金額が示唆しているのは、過半数の高齢者世帯が悠々自適の年金生活を過ごしているのではなく、就労先がないために、貯蓄を取り崩すか、消費を切り詰めて生活しているということです。

また、冠婚葬祭や進学、その他に伴う「急な出費」の際にも、貯蓄がなければ借金に頼ることになります。

つまり、世界でも高負担の社会保障制度を維持していても、老後に貯蓄がないと、「生きられない」可能性があるのです。


「・では、貯蓄は可能か?」については、次回以降で検証いたします。


新著「日本が幸せになれるシステム問題集」では、今回取り上げた部分からは、以下のような問題を出しています。ぜひ、ご覧ください。


問題36:日本の税収構造 (答えはP ←タップ)

財務省の資料による日本政府の一般会計税収の最大の財源は、現在、消費税収となっています。一方、OECDの統計では、我々が納めている社会保険料も税収として扱われ、政府の総税収に含まれています。

では2017年時点で、OECDの統計による社会保険料収入は日本の総税収の約何割を占めているでしょうか?

1、約2割
2、約3割
3、約4割


問題48:社会保障費の内訳と財源 (答えはP ←タップ)

日本の社会保障制度財源は各種社会保険料、税金、借金などですが、2019年度にはこのうち保険料収入は何割ほどだったでしょうか?

1、約5割
2、約6割
3、約7割


問題49:高齢者の年金依存度 (答えはP ←タップ)

公的年金の受給開始年齢は原則65歳で、本人が希望すれば60~70歳の間で繰り上げたり、繰り下げたりすることができます。また、政府は2022年4月からは受給開始年齢を繰り下げられる上限を70歳から75歳に引き上げることで、高齢者の就労を後押しすると報道されました。

高齢者世帯とは「65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯」です。では2018年の時点で年金収入だけで生活している高齢者世帯が、全高齢者世帯に占める割合はどれくらいだったでしょうか?

1、3割以上、4割未満
2、4割以上、5割未満
3、5割以上


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・Book Guide:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?/ How to protect the pension and medical care systems (Arata Yaguchi: Kindle Edition)

 

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・著書案内:日本が幸せになれるシステム・65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方(著者:矢口 新、Kindle Edition)
 

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