・公平な分配は税制改革から | 矢口新

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☆公平な分配は税制改革から

日経新聞、10月9日の報道では、OECD加盟国を含む世界136カ国・地域が、法人税の最低税率を15%とすることで合意した。店舗などの物理的な拠点がなくてもサービス利用者がいればIT企業などから税収を得られるデジタル課税も導入する。2023年の導入を目指す。


法人税率について、接著の問題集では、以下のように設問している。


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問題44:世界の法人税率の推移 (答えはP ←タップ)

米バイデン政権は、主要各国に法人税率の下限設定を提案しました。一部の国が極端に低い法人税率を提供することで、グローバル企業の本社を誘致する動きを牽制したものです。

では、2000年代に入ってから、世界の法定平均法人税率はどのように推移してきたと思われますか?

1、世界的に低くなってきた
2、ラテンアメリカ諸国以外は低くなってきた
3、まちまちで、共通したものは見られない

参照:日本が幸せになれるシステム問題集・日本経済の病巣を明らかにするための57問(著者:矢口 新、Kindle Edition)



答え44: 1

2000年時点の世界の地域別法定平均法人税率は30%を超えていました。現在は23%ほどです。また、OECD36カ国中、もっとも法人税率が低いのはハンガリーの9%で、次いでアイルランドが12.5%となっています。

米国のバイデン政権が主要各国に提案する法人税率の下限設定は15%ですから、無理のない提案だと言えるかもしれません。一方、世界の平均よりはるかに低い下限を設定したことで、まだ下げ余地があると、法人税率の引き下げ競争が継続する可能性もあります。

この期間の各国の税制は、法人税率や高所得者の税率を引き下げ、消費税率を引き上げるという貧富格差の拡大を促すものでした。

日本の場合は、社会保険料も上げ続けられましたので、可処分所得が継続的に減少してきました。これが消費低迷に繋がり、日本の経済成長を止めたと言えるでしょう。

参照図44:世界の地域別法定平均法人税率の推移(出所:OECD)
 

図44は、2000年から2020年までの世界の地域別法定平均法人税率の推移です。緑色の折れ線グラフがアフリカ諸国、青色が中南米、オレンジ色がOECD、赤色が世界全体、水色がアジア諸国の平均法人税率となっています。

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また、同日の日経新聞には岸田首相の所信表明に関する記事もあった。

「岸田文雄首相が8日の所信表明演説で用いた言葉を分析すると、政権で重視する政策や政治姿勢が浮かんだ。経済政策を巡り『分配』が頻出する。菅義偉前首相が繰り返した『改革』に代えて『創る』『拓(ひら)く』『築く』など新たな仕組みの構築を連想させる動詞を用いた。」

同じ日の違う記事では、「岸田文雄首相は8日、就任後初の所信表明演説に臨んだ。31日投開票の衆院選を控え、子育て世帯などへの給付金支援や賃上げ企業の税制優遇を唱えた。分配重視の姿勢を示す一方、成長を阻む規制の撤廃などの『改革』に言及しなかった。『成長と分配の好循環』の道筋は見えない。」


岸田首相が「分配」を強調するのは、もしかすると、先日の記事で目にした「渋沢栄一」の影響かも知れない。新首相は近代日本を作り上げた功績ナンバー1とも目される渋沢栄一を信奉し、新たな仕組みを『創る』『拓(ひら)く』『築く』ことを目指している可能性があるのだ。

渋沢栄一に関しては、私自身が同様に高く評価していて、新著にはこう記した。


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答え27: 3

1980年代の後半、所得税の最高税率が高く累進性が大きかったため、労使の手取り額は現在よりはるかに平等でした。

1986年頃の最高税率は88%で、所得税は15段階の累進課税、個人住民税も14段階の累進課税でした。2021年現在の最高税率は所得税、個人住民税を合わせて55%です。

所得税88%で、たとえば、課税年収が1億円だと、1,200万円が手元に残ります。2億円では2,400万円です。10億円になると1億2,000万円が残ります。これではやりがいが削がれるでしょうか?

当時の日本人はやりがいを削がれることなく高度経済成長を成し遂げ、バブルにまで至りました。経営者は自分の報酬を増やしても9割近くを税金に取られるので、設備投資をおこない、人件費を上げ、「One For All, All For One」とばかり、会社全体が一丸となったチームとして事業に向かうことができていたのです。失業率も2%前後と低く、従業員の8割以上が正規雇用で安定していました。チームに奉仕するマインドを育成するには、渋沢栄一やピーター・F・ドラッカーも指摘しているように、より平等な環境づくりが肝要だと言えます。

ちなみに、現在は高所得者に有利な累進性が低い税制の上に、所得に関係なく同率の住民税、消費税、さらには値上げが続く社会保険料と、貧富格差が拡大する税制となっています。おまけに、雇用も不安定となりましたので、労使の利害が対立するシステムになりました。これが企業の競争力低下、ひいては日本経済低迷の一因だとも言えます。

参照図27:所得税と個人住民税の累進性の推移(出所:財務省)
 

図27は、所得税と個人住民税の1986年(昭和61年)から2015年(平成27年)までの推移を、上から所得税と個人住民税を合わせたもの、所得税だけ、個人住民税だけの順に表示したものです。

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現在のNHKの大河ドラマは渋沢栄一が主人公だ。歴史小説や大河ドラマは創作だ、嘘が多いという見方があるが、渋沢栄一本人が記した「論語と算盤」の内容と共通しているので、少なくとも今回は概ね史実だとみていいだろう。

渋沢栄一の考え方は、金融市場の最先端で売買してきた私などの見方に非常に近く、極めて合理的だ。時代背景を考えれば、驚異的な進取性と言えなくもないが、論語がベースであるように、古代から合理的なことは不変だということなのかも知れない。

もっとも、渋沢栄一の提案は当初はことごとく否定される。同氏の凄いところは、説得を諦めないこと、粘り強く行動に移すこと、結果で周りを納得させるところだ。

薩長が壊した旧体制を、幕臣だった渋沢栄一を含めて、オールジャパンで新体制としたのだ。今も、そうした人が求められている。だから、渋沢栄一が新1万円札の顔となり、大河ドラマにもなったのだろう。

『成長と分配の好循環』の道筋は、1988年以前の、日本経済と企業活動、国民の生活をしっかりとサポートしていた税制に戻すことだと言えるのではないか。


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