・米国で何百万人ものホームレスが出現? | 矢口新

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☆米国で何百万人ものホームレスが出現?

・降ってわいたインフレ懸念?

8月末のジャクソンホールで、パウエル米連銀議長は、量的緩和の規模縮小(テイパリング)について、年内開始に初めて自ら前向きな見解を示した。

9月のFOMCでは、ゼロ金利政策の維持を決め、短期金利の指標であるフェデラルファンド金利の誘導目標を0~0.25%に据え置いた。また、テイパリングの開始を次回会合がある11月にも決定する見通しを表明した。パウエル議長はテイパリングを「来年半ば」までに終えるのが適当との見解を示し、ゼロ金利の解除時期を2022年に前倒しする可能性を示した。

そのことで9月に入って米株が売られ始めたことで、投資家たちがインフレが継続しそうなことを、「突然、認識し始めた(Sudden realization that inflation may persist is starting to dawn on many U.S. investors)」などと報道されている。

とはいえ、パウエル議長が「米経済は資産購入の縮小を開始できるだけの進展をまだ見せていない」と強調し、「インフレは一時的なもので、警戒感を持ちながらも緩和的な金融政策を続ける」とした7月のFOMC時点でも、既に警戒すべき水準だった。

以下に、当時の私のブログをそのまま引用する。


・米連銀は、火に油を注ぎ続けるのか?(2021-07-19)

米6月の消費者物価指数は前月比+0.9%、前年比+5.4%だった。コア指数は前月比+0.9%、前年比+4.5%だった。パンデミックからの需要の急回復に供給不足が重なり、前年比ではそれぞれ約13年ぶり、約30年ぶりの伸び率だった。半導体不足で自動車生産が滞り、中古車価格が19年比で+41%となるなど、国民に身近な品目も値上がりが続いている。

また、米4月のS&Pケース・シラー20都市住宅価格指数は前月比+1.6%、前年比+14.9%だった。前年比では1987年の統計開始以来の最高の伸び率を記録した。米5月の中古住宅販売価格中央値は前年比23.6%の35万0300ドルで、全米不動産協会が記録を取り始めた1999年以降で最大の上昇率となった。

そのためレントも上がり、米国のどの州でも、どの郡でも、どの都市でも、フルタイムで週に40時間働く最低賃金労働者では2ベッドルームの賃貸住宅の家賃が払えないことが、全米低所得者住宅連合の報告書で分かった。1ベッドルームの賃貸住宅でも、フルタイムの最低賃金労働者家賃を払える郡は全米で3000以上ある郡の7%(218郡)だけとなった。
参照:Minimum wage workers can't afford rent anywhere in America 


一方、米連銀のパウエル議長は「米経済は資産購入の縮小を開始できるだけの進展をまだ見せていない」と強調。「インフレは一時的なもの」で、警戒感を持ちながらも緩和的な金融政策を続けるとした。

パウエル議長が言及する経済回復の進展とは、労働市場の回復だ。ピーク時には2500万人を超えていた失業保険の継続受給者が、先週発表の数値では324万1000人にまで減少したが、まだ多いと言えば多い。

一方で、米5月のJOLTS求人件数は920万9000件で、6月の雇用統計による5月の失業者数931万6000人とほぼ一致していた。求職しながら求人に応じない理由としては、対人職の求人が多くコロナ感染が恐いため、失業手当を受け取っているため、子育て対策が不十分なためなどが挙げられている。

このことは、金融緩和により労働市場の回復がこれ以上進展するとしても、パウエル議長が望む水準にまで達成するには、相当期間を要することが見込まれることだ。つまり、それまでは失業保険の継続受給者が2500万人を超えていた時期と、同規模の金融緩和を継続する「懸念」があることを暗示している。

インフレの炎が、パウエル議長が見なしているように仮に「くすぶっている」だけだとしても、コロナ禍の最悪期に始めた、ほぼゼロ金利と大量の資金供給いう前代未聞の規模の「燃料」を注ぎ続けると言うのだ。


ところが、米国にはインフレの鎮静化を相当期間も待てない人々がいる。

6月の住宅保護期限切れで、何百万人もの米国人が立ち退きに直面か。1100万人以上の米国人たちが家賃を滞納している。そして、全国的な立ち退き強制禁止期間が期限切れとなる6月に、多くが自宅から追い出されるかも知れない。
CDCの立ち退き猶予は9月から実施されていたが、6月30日に失効する。
立ち退き率は州によってバラツキが出る見込みだ。
例えば、予算と政策優先センターによれば、フロリダ州やサウスカロライナ州では賃貸者の4人に1人が家賃を滞納しているのに対し、メーン州やケンタッキー州では6%にとどまっている。
参照:Millions of Americans could face eviction as housing protection expires in June 


フルタイムで週に40時間働いてもホームレスになるとすれば、条件の合わない求人に応じることはできない。米連銀の金融緩和でますます住宅価格が上がるとすれば、これ以上の労働市場の改善はむしろ望み薄になってくる可能性がある。

資産運用会社のブラックロックはインフレ率の上昇を受け、9月からすべての従業員のベースサラリーを8%引き上げると報道された。状況次第では2022年初めにも追加で賃上げを行うという。

一方で、一般の米大企業の従業員たちはそこまで恵まれてはいない。

昨年のCEO報酬、平均労働者の299倍以上。S&P500企業のCEOの平均報酬は昨年、平均的な労働者の給与の299倍だったと、アメリカ労働総同盟・産業別組合会議が年次「役員報酬監視」報告書で発表した。
CEOたちは平均報酬総額1550万ドルを受け取った。過去10年間で毎年26万ドル以上の報酬増だった。その一方で、2020年の生産部門と非管理職の労働者の平均所得は4万3512ドルで、過去10年間で毎年ほんの957ドルの上昇だった。
参照:CEOs made 299 times more than their average workers last year


バイデン政権は大規模な財政出動の財源を賄うため、大企業や富裕層に増税を課すことはあっても、低中所得層に負担を強いることはないと公言してきた。

しかし、賃金の上昇が物価の上昇に追いつかず、明日の住居、明日の生活に脅える人々が急増していることは、大規模な政府の財政出動や中央銀行の金融緩和を事実上負担しているのは低中所得層であることを強く示唆している。

参照:米連銀は、火に油を注ぎ続けるのか?(2021-07-19)



・債務上限問題

その後、7月のS&Pケース・シラー20都市住宅価格指数は前月比+1.5%、前年比+19.9%にまで加速した。7月の新築住宅販売価格中央値は前年比+18.4%の39万0500ドルと、過去最高を更新した。中古住宅販売価格中央値は前月比-0.8%、前年比+18%の35万9900ドルだった。

7月のJOLTS求人件数は1093万4000件と、6月の1018万5000件から増加、5カ月連続で過去最高を更新した。7月に失業し、求職していたのは870万人、採用数は666万7000人で、6月の683万人からわずかに減少した。

求人があっても就職をためらう理由が、コロナ感染への恐怖、ワクチン接種義務化、保育園の不足、あるいは家賃を払えない給与待遇なのだとすれば、ゼロ金利政策や、量的緩和といった金融政策だけで改善することは難しい。

また、米国の家賃は、賃貸契約の更新が行われることが多い夏の早い時期にピークに達した後、9月に通常見られる季節的な下落の兆しが示されていないという。多くの賃貸者にとっては、ますます政府の援助だけが命綱となっているのだ。


ここで大きな問題が浮上してきている。債務上限問題だ。イエレン財務長官によれば、米政府の現金はこの10月18日で枯渇するが、これまでのところ、米議会は債務枠の拡大も、拡大までの繋ぎ融資も承認していない。

米政府に資金がなくなると、米国債の債務不履行や政府の機能が停止されると言われているが、「住宅保護」の原資がなくなることも意味するのではないか?


米国はコロナ対策の一環として大量の資金を供給したが、その原資は借金だ。MMTと称される意見では、インフレがない限り、政府はいくらでも貨幣を発行できるとされている。つまり、政府は信用力だけで買い物ができるということだ。

これはインフレが来るまでに、政府の信用力が低下する前に、借金を返せば問題にはならないことも示唆している。もっとも、MMTはインフレが来れば増税すればいいとしているので、政府の借金は、返せなくてもインフレと増税で民間から巻き上げれば良いという、政府にとっては好都合の意見だ。

いずれにせよ、米政府の債務上限は、これまでの財政支出が税収という果実を産み、債務残高が減少に向かうまで、広げ続ける必要があるということだ。米議会も最終的には債務枠拡大に同意するしかないと思われる。


それにしても、米国がこのように債務上限が来るたびに恒例のように大騒ぎするのは、ある意味で、健全だ。

政府債務がGDP比で米国より大幅に多い日本では、日本財政は忘れられたかのように、静かに破綻に向かっている。

日本もコロナ対策の一環として大量の資金を供給したが、その原資は借金だ。そして、その資金は苦境の企業に貸し出されたが、企業の借金は誰も忘れてはくれない。

日本の状況がより深刻なのは、その債務の巨大さだけではない。そこまで借金しても、経済が上向かず、税収も増えないような税制となっていることだ。

何度も繰り返すようだが、1980年代までの日本が強かったのは偶然でもなければ、奇跡でもない。経済と財政をしっかりとサポートする税制だったのだ。

詳しくは、拙著をお読みいただきたい。


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