・財源には触れない未来の日本の首相 | 矢口新

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☆財源には触れない未来の日本の首相

自民党総裁選の4候補がテレビ番組やオンラインで討論を行い、「私が日本の首相となった暁には、、、」と持論を展開している。参考までに、9月26日時点の各新聞のオンライン・ポータルサイトから、総裁選関連記事の見出しを列挙する。


日本経済新聞:
アベノミクスとの距離感浮かぶ 自民総裁選4候補支持層
河野・岸田・野田氏は修正に比重 高市氏は加速や継承求める

「次の自民総裁」河野氏46%・岸田氏17%・高市氏14%・野田氏は5% 本社世論調査

河野・高市氏、原潜保有「検討を」 岸田・野田氏は慎重


朝日新聞:
「1億円の壁」は解消できる? 自民党総裁選、金融所得課税も焦点に

人は「見た目」に左右される 総裁選のあの人は「選挙の顔」になるか


読売新聞:
見当たらず。


毎日新聞:
「え?私…自民党員なん?」 同意なく登録、総裁選投票用紙届く ツイッターに戸惑いの声次々

自民支持層、投票するなら河野氏47%、高市氏28%、岸田氏18%


産経新聞:
河野氏「フェイクニュースだ!」 フジ番組解説に抗議

河野氏、親族企業による対中政策影響を重ねて否定

自民総裁選の歴史的意義を問う 経済成長目標未達に終止符を

日本の原潜保有に河野氏、高市氏前向き

メッキはがれる自民党総裁選候補

岸田氏「Body&Soul」を熱唱 弱者守る社会へ政策語る

自民・佐藤氏「極めて失礼」 河野氏の政調改革

河野氏「部会でギャーギャー」発言撤回


東京新聞:
<自民党総裁選>選択的夫婦別姓への姿勢に違い 各候補 家族観に大きな違い

「 自民党総裁選 」の記事一覧


47NEWS:
服装ダメ出し、若手に電話攻勢…高市氏支援“軍師”安倍氏の真意


共同通信:
見当たらず。


時事通信:
原潜保有、河野・高市氏前向き 岸田・野田氏は否定的―自民党総裁選

議員支持、岸田氏一歩先行 河野氏猛追、高市氏追い上げ―自民総裁選

経済安保、強化策競う 担当相設置、サイバー防御―自民総裁選

国土強靱化へ投資拡大 岸田、高市両氏が主張―自民総裁選

自民総裁選は「関ケ原」 安倍VS菅、代理戦争

河野氏、「不適切」発言を陳謝 自民部会を軽視


総裁選がここまで開かれたものであることは、好ましいことだと思う。総裁選の記事がポータルサイトには見当たらなかった社のものも、私が見た時間がたまたまそうであっただけなのだろう。ここでは、各社の取り上げ方に触れる気はない。

とはいえ、私が残念に思うのは、政策を資金面で支える財源に関しての発言があまり見られないことだ。例えば、以下のようなものだ。


「自民党総裁選に立候補している4氏は9月22日、子ども政策に特化した党内の討論会に出席した。子どもの貧困や児童虐待、少子化といった課題山積の分野で、全員が『子どもを含む家族を支援する政府予算の倍増』に賛成した。ただ、その財源をどうするかについての言及はほぼなく、候補者同士が議論をたたかわせる場面もなかった。」

参照:総裁選、子ども政策は? 国際的に予算見劣り 財源論に口つぐむ4氏


また、某社の社説のタイトルには、「自民党の次期首相は『年1兆円歳出削減で財政収支黒字化を』」というようなものもあった。


「私が日本の首相となった暁には、、、」と、理想を語れば語るほど、その政策を資金面で支える財源が必要となる。「年1兆円歳出削減で財政収支黒字化を」などと言われると、上記のタイトルでは「原潜保有」や「国土強靱化へ投資拡大」、「子どもを含む家族を支援する政府予算の倍増」も掛け声だけで終わる。

一方で、財政の立て直しは急務だが、年1兆円程度の歳出削減では財政収支が黒字化する見通しが立たない。例えば、2011年度から2020年度までの平均税収は年53.7兆円なのに対し、平均歳出は年107兆円だ。つまりこの10年間、総税収に匹敵する平均53.3兆円もの財政赤字を出し続けている。

その結果、統計がある1975年度以降から2020年度までの累積財政赤字は1408.9兆円に膨れ上がっている。年1兆円程度の歳出削減では、1000年経っても黒字化しないどころか、常識的には累積赤字は増え続けるのだ。

参照:日本の財政収支の推移


そこで、私の新著から関連した個所を2項目ほど引用する。


36.日本の税収構造

図35(省略)は2017年の日本の税収源と、同種の税収源のOECD平均との比較だ。青色の棒グラフが日本のもの。灰色がOECD平均だ。左のペアから順に、所得税、法人税、社会保険料収入、給与税、固定資産税、消費付加価値税、消費税(付加価値税を除く)、その他となっている。日本には給与税とその他がない。

ここで注意を要するのは、日本の最大の税収源は社会保険料収入(Social security contributions)で広義の税収(tax receipts)の40%を占めていることだ。社会保険とは医療保険、年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険の総称だ。つまり、社会保障費の財源とされる日本の消費税は補助財源の位置づけだということになる。そこで、前述の図01で見てきた一般会計財政とは別の、社会保障費の収支についても見る必要がでてきた。これは、次章「崩壊前夜の社会保障制度」で取りあげる。

図35で知れるのは、社会保険料収入40%と消費税収21%、固定資産税収8%を合わせると、日本の税収の7割近くが景気による振れの少ない安定財源に近い形で徴収しているということだ。しかし、前述したように安定財源は景気が悪いときにも容赦なく徴収することで、かえって景気後退を長引かせるリスクが大きいと言える。反対に景気が良くても大きな上振れがないのだ。

また、社会保険料収入に限ればOECD平均の1.5倍以上も徴収している。このことは財政再建のために歳出を削ろうにも、社会保障制度に手をつけなければ難しいことを示唆している。

ところが後述するが、その社会保障制度はすでに崩壊に瀕しており、削減など考えられない状態だ。つまり、社会保険料収入を減らそうとするのではなく、上記の所得税、法人税、社会保険料収入、給与税、固定資産税、消費付加価値税、消費税(付加価値税を除く)のうち、景気後退のリスクが少ない所得税、法人税からの税収増を図ることが不可避であることが分かるのだ。この2つの景気後退リスクが少ない理由は、事業をおこなった結果の給与や利益に、結果に応じて課税するからだ。

では前述の図33で見た、スウェーデンと並んで消費税率(付加価値税率)がもっとも高いデンマークはどうなのだろう? 


41.OECD内32カ国の政府支出

図40(省略)はOECD内32カ国政府の支出側の比較だ。赤色の棒グラフが日本のもの。日本政府の総支出はGDP比38.6%で中位以下だ。また、日本政府の社会保障支出はGDP比23.6%で、保険料を広義の総税収の6割以上も徴収していながらOECD平均を少し上まわっているに過ぎないことが分かる。それでも社会保障支出を削っているわけではなく、そのほかの支出は14.9%と、最下位から2番目に位置している。このことは、日本は税収が足りないことを意味している。

税収が平均以下の日本政府は当然のことながら多くは支出できない。それでも社会保障支出は削り難いので、そのほかの支出、たとえば、教育への支出などを削っている。これも日本の競争力が低下してきたことの一因だと言える。

総支出でデンマークは4位、スウェーデンは6位だ。社会保障支出もデンマークが3位、スウェーデンが7位と上位にいる。つまり、比較的大きく稼いで、大きく使い、豊かで住みやすい国を実現させている。一方の日本はなにしろ税収のピークが1990年度なので、税制によってジリ貧が宿命づけられたとみなすことができる。

私は、取れるところから取れるときに取るという所得税への依存が、取れないところには与えるという社会保障制度の安定にも、国民の幸福感にもつながっている可能性を見ている。

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総裁選候補の4氏が財源について言及しないのは、公言できないからだ。念頭にあるのは、これまでのように借金を膨らませ、アベノミクスでのように日銀による資金供給で賄うということだ。しかし、こうした借金は、過去の例では、民間資産の没収で支払われることになる。


1988年度の税収は50.8兆円で、税収に消費税が加わった1989年度から2019年度までの31年間の平均税収は50.7兆円だ。この間、日本経済は1.41倍(円建て)に、世界は4.42倍(ドル建て)に成長した。仮に、日本が世界の標準並みに成長し、1988年当時の税制でそのまま税収増があったとしたなら、2019年度の税収は(50.8X4.42=)224.5兆円に達していた。それが現実は、58.4兆円だった。

このことは、税制改革でしか、日本は救われないことを示唆している。

 

 


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・New Book Guide:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?:
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