・戦後最大の経済の落ち込みなのに、過去最大の税収? | 矢口新

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☆戦後最大の経済の落ち込みなのに、過去最大の税収?

メルマガの読者の方から、以下のようなご質問を頂いた。


「先日財務省発表の2020年度の国の一般会計の税収が、過去最高だった(60兆8216億円)と報じられました。是非、この件について、ご解説頂きたくご連絡いたしました。

宜しくお願い致します。」


この件について、日経新聞の報道から要点だけを抜粋引用する。


*****

政府は20年12月時点で55.1兆円と見込んでいた。財務省は過去最高だった18年度の60.4兆円を超えるとみて精査している。想定より5兆円超上振れする。

各年度の税収は3月期決算企業の法人税収などが固まる5月分までを合算する。20年度は法人税が前年度比4000億円増の11.2兆円、消費税が同2.6兆円増の21兆円だった。所得税はほぼ前年度なみの19.2兆円で推移した。

なかでも8兆円とみていた法人税は携帯電話やゲーム、自動車、食品といった産業の業績が好調で、見込みより4割ほど増えた。米国や中国などの景気回復の恩恵もあり、製造業を中心に業績は底堅い。

消費税収も19年10月の消費税増税の効果が通年で表れ、過去最高となった。

飲食や宿泊など一部の業種で落ち込みが続く一方で国の税収が増えたことは、企業業績の回復が二極化し「K字」型で進んでいることを映す。

中小の事業者はもともと赤字で法人税を納めていない企業もあり、税収が減る要因になりにくかったという側面もある。中小の業績悪化の程度は税収に関する統計上は表れにくい。

コロナ禍でも税収が確保できるとはいえ、歳出はそれを上回るペースで膨張し、財政面での余力は乏しい。20年度は補正予算を含めて一般会計予算の総額が175.7兆円に達した。21年度の当初予算は106.6兆円と9年連続で過去最大を更新した。

税収の上振れで補正予算の財源として活用が可能な剰余金は4.5兆円程度に達するとみられる。首相は次期衆院選をにらみ、夏にも大型経済対策の編成を指示する。コロナ禍で打撃を受けた中小企業など焦点を絞った支援策などが不可欠となる。

参照:国の20年度税収、コロナ禍でも過去最高 60.8兆円に


*****


財務省のホームページには、我が国財政についてまとめた16ページからなるPDFがある。私の新著はそこからいくつかの図表を引用、解説している。

1ページ目は、令和2年度一般会計予算の歳出内訳、
2ページ目は、同歳入内訳
3ページ目は、財政収支(歳出、税収、公債発行額)の推移
などなどだ。

その8ページに、総税収と法人税、所得税、消費税の推移が見られる。

参照:一般会計税収の推移


この右端には、2020年度(令和2年度)一般会計税収の当初の見込み額が書かれている。それぞれ、総税収が63.5兆円、消費税収が21.7兆円、所得税収が19.5兆円、法人税収が12.1兆円とされていた。

ちなみに、2019年度の総税収は既に58.4兆円に下方修正されている。これは主に消費増税による景気後退を受けたものだ。(消費増税効果はあるが、他の減収を埋めきれなかった。)

今回報道された2020年度の税収は60.8兆円で、想定より5兆円超上振れするとあるが、当初の見込みからは3兆円近く少ない。このことは、コロナ禍により税収が8.5兆円減少すると想定していたものの、思ったほど酷くはなかったことを意味している。

どうしてか?

税収の大きい順に見ていくと、消費税収が21兆円と当初見込みの21.7兆円から、所得税収が19.2兆円と当初見込みの19.5兆円から、法人税が11.2兆円と当初見込みの12.1兆円からそれぞれ下振れした。

コロナ禍での想定は上記の日経新聞にある通りだ。当初見込みを敢えて付け加えるのは、平時に想定した見込みだからだ。2020年度に消費増税効果が通年に現れることはコロナ禍前から分かっていたが、それでも0.7兆円の減収となった。なぜなら、消費売上が落ちたからだ。

当初見込みから最も落ち込んだのは法人税収だ。コロナ禍は生き方やビジネス環境の大変化だ。大変化は被害と恩恵とをK字型にもたらすものだ。旅行・宿泊・飲食などは大幅に落ち込んだが、ネットやゲーム関連は恩恵を受けた。そのため、落ち込みはコロナ時想定の4.1兆円ではなく、0.9兆円で留まった。

実際、東洋経済によれば、ナブテスコが346.2%、ミズホメディーが150.3%、パソナグループが109.3%も最高益を更新している。また、キングジムは20期ぶり、アルペンと新光電気工業は15期ぶり、パソナグループは13期ぶりの最高益更新だ。

加えて、株式市場の堅調を受けた株式譲渡益課税による税収増があったにも関わらず、法人税収が0.9兆円減と最も見込みから遠かったのは、K字型の上振れした企業以上に、下振れした企業が多かったことを示唆している。

また、歳出総額が175.7兆円となったことも大きい。これだけの資金をバラまいたのだから、K字回復のように恩恵を受けるところが出てきたり、税収が過去最大となったことは驚くに値しない。また、このことは単年度の財政赤字が114.9兆円になったことを意味している。

上図PDFのページ3をご覧いただきたい。

前の税収トップは2018年度の60.4兆円で、歳出は99兆円だ。その前は1990年度の60.1兆円で、歳出は69.3兆円だ。つまり、28年かけて最高税収を0.3兆円更新したが、赤字は9.2兆円から38.6兆円に拡大した。その2年後に0.4兆円更新したが、赤字は114.9兆円となった。この状況で、最高税収でない方が恐ろしい。


また、それよりも大きな問題は2020年度から消費税が日本の最大財源となったことだ。

消費税は安定財源だと言われている。8ページのグラフを見ていただければよく分かるが、消費税には景気後退時にも下振れがなく、上振れは基本的に税率を上げた時に起きている。

そこで少子高齢化における貴重な安定財源だとして、社会保障費の補助財源だともされている。

しかし、実はこれはまた恐ろしい事実をも表している。

景気後退時にも容赦なく取り立てるということは、飢饉の時にでも年貢を納め続けるということなので、家計や企業経営に大きな負担をかけることになる。その結果が景気回復の遅れと、総税収の減少に繋がってきた。

消費税は売上高に掛ける税金だ。言い換えれば種や籾の段階で、1997年以降なら5%を政府が徴収する。結果的にマイナス成長で秋の収穫が減り、実りに掛ける所得税や法人税、ひいては総税収が減ってきたのだ。

(消費増税は、景気後退、税収減だけでなく、ディスインフレ、赤字企業の急増、賃金の低下などとも強い関連性があることが分かっている)

また、安定財源で上振れは基本的に税率を上げた時に起きるということは、景気が回復しても大きな伸びはないということだ。このことは、日本の税収は今後も60兆円を大きく上回る見通しが立たないことを意味する。

つまり、100兆円を優に超えている歳出を半減させなければ、プライマリーバランスの黒字化が望めないことになる。

では、消費税率を引き上げればいいのか?


続きはマネーボイスにまとめたものがあるので、ぜひ、ご覧いただきたい。

消費税「ゼロ」こそ日本復活最後の切り札。なぜ立民「5%」案は無意味か?小学生でもわかる3つの根拠がこれだ=矢口新



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