・年金保険料が払えない人急増中 | 矢口新

━━━━━━━━━━━ Seminar on Trading ━━━━━━━━━━━
    殿堂入りメールマガジン:「相場はあなたの夢をかなえる」
    ☆無料版(参照&登録):https://www.mag2.com/m/0000031054.html
「生き残りのディーリング」の著者による経済と相場の解説(折に触れて)
★有料版(\840税込:購読登録):http://www.mag2.com/m/0001111340.html
まぐまぐ大賞2016:資産運用(予想的中!)第1位(毎週月曜日)
━━━━━━━━━━━━【 Dealer's WEB 】━━━━━━━━━━━━━

・iPad、iPhoneでお読みの方は、上部アドレスバーにある[リーダー]をクリックすると、読みやすくなります。



☆年金保険料が払えない人急増中

将来年金が受け取れない人がジワジワ増加中だという、気になる記事がダイヤモンドに載っていた。以下にその事実関係の要点をまとめてみよう。


*****

・国民年金の年金保険料納付率は上がっているのに、保険料を実際に払っている人が減っている。

6月28日、厚生労働省「令和2年度の国民年金の加入・保険料納付状況」公表、国民年金の保険料納付率は71.5%。前年比2.2ポイントアップ、9年連続の改善となった。

2020年度の国民年金の加入者1449万人のうち、規定の保険料を納めたのは726万人で、全体の50%ほど。

42%にあたる609万人が、納付猶予や全額免除を受けている。コロナ禍で経済環境が悪化し、多数の雇い止めも発生した。そのため、納付猶予や申請全額免除を利用した人が、前年度に比べて26万人も多くなった。

残り8%の115万人は未納者。前年度に比べると、保険料納付者は20万人減少、


国民年金保険料の納付率:どのくらい納付義務を果たしているか?

納付月数÷納付対象月数×100で算出。

分母となる納付対象月には、法定免除、申請全額免除、学生納付特例、納付猶予、産前産後の免除を受けた月数は含まれていない。

それまで保険料を滞納していた未納者が、納付猶予や全額免除の手続きを行えば、分母が減って納付率は上昇する。

こうした算出方法のルールによって導き出されたのが、「納付率71.5%、9年連続の改善」という数字。


・日本の公的年金保険は、3つの経済的リスクをカバーできる設計になっている。

1)老齢年金…老後の生活を支える年金
2)遺族年金…加入者の死亡後に残された家族の生活を支える年金
3)障害年金…病気やケガをして障害が残った場合の生活を支える年金

老齢年金:給付を受けられるのは原則的に65歳になってから。

遺族年金:扶養する家族のいる人が死亡した場合に支払われるもの、
子どものいない人などは給付の対象にならないこともある。

障害年金:障害が残り仕事や生活に支障、老若男女いつでも誰にでも。

公的年金保険は、障害年金を備えているために、誰にとっても不可欠な保障。
日本では皆年金制度をとって、国籍に関係なく、
この国で暮らす20~60歳までのすべての人に、公的年金保険加入を義務付け。

加入者には保険料負担。保険は相互扶助の仕組み、
給付を受けられるのは、保険料の納付義務を果たした人に限られる。

若い世代の人も受給する可能性のある障害年金は、
次の2つの保険料納付要件のいずれかを満たしていることが条件。

1)初診日がある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上、保険料を納付(または免除)していること
2)初診日が65歳未満で、
初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと


・年金の加入先は職業に応じて異なる。

1)自営業やフリーランスの人などは「国民年金」、
2)会社員や公務員は「厚生年金」。
3)会社員や公務員に扶養されている配偶者は、「第3号被保険者」として国民年金に加入。

2)の厚生年金の保険料は、所得に応じた保険料を労使折半で負担する。自己負担分は給与から天引きされ、会社負担分と合わせて、勤務先がまとめて納付。

3)の第3号被保険者は保険料の負担はなく、加入手続きは配偶者の勤務先が行う(以前は、手続き漏れによって未納期間が発生したこともあったが、救済措置が施され、過去に起こった第3号被保険者の未納問題は解消している)。会社員や公務員、その配偶者は、保険料の未納が発生することは、まずない。

1)の国民年金は、自営業者やフリーランスの人、非正規雇用の労働者などが加入するもので、自ら保険料を納めなければならない。保険料は、所得に関係なく一律で、2021年度は月額1万6610円。

40年間、保険料を全額納付した場合に、65歳からもらえる老齢基礎年金の金額は78万0900円、月額約6万5000円(2021年度)。


・保険料の納付が難しい人のために用意されているのが、納付猶予や申請免除という救済制度。

●納付猶予
失業したり、収入が減少したりして、本人と配偶者の前年の所得が一定以下の場合に、本人の申請によって、保険料の支払いを一定期間待ってもらえる制度。利用できるのは、50歳未満の人。
猶予が認められると、その間は保険料を納めていなくても、受給資格期間にカウントされ、障害年金と遺族年金は受給できる。ただし、保険料を納めていない期間は、老齢年金の受給額には反映されない。

●申請免除
本人・世帯主・配偶者の前年の所得が一定以下、または失業などによって、経済的に苦しい場合に、本人が申請すると、保険料の納付が免除される制度。免除額は、所得に応じて、「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」の4種類。
免除を受けた期間は、受給資格期間にカウントされるので、老齢年金、障害年金、遺族年金のいずれも受給できる。ただし、老齢年金の受給額は、免除額に比例して減額されるので、満額の老齢年金を受け取ることはできない。

こうした救済措置があるのに、何も手続きしないで保険料を滞納してしまうと、老後の年金だけではなく、病気やケガで働けなくなった時にもらえるはずの障害年金、死亡時にもらえる可能性のある遺族年金の受給権も失うことになる。経済的に苦しい時は、積極的に納付猶予や申請免除を利用して、年金の受給権を確保しておくのが鉄則だ。

通常、納付猶予や申請免除を受けるためには、所得の証明が必要。臨時特例が適用されて、現在は「減収見込み」で利用できる。2020年2月以降にコロナ禍によって収入が減少し、所得水準が免除や納付猶予の要件を満たす見込みがあれば申請可能。2021年度分の保険料も、引き続き対象となっている。


*指定期間の保険料支払い、または免除等の手続きがなければ年金はもらえない
*保険料支払いが苦しくなったら納付猶予や申請免除を利用しよう。
滞納すると老齢・障害・遺族すべての年金の受給権を失う。
*申請免除を受けた場合は、免除額に応じて老齢年金が減額される。
いつまでも申請免除を受け続けると、老後に不安を先延ばしすることになる。


・「低年金」状態になる可能性のある人が増えている。

国民保険料を納めていない人は半数に及んでいる。今後、保険料の追納をしなければ、老後に無年金、低年金となる可能性が高く、不安要素になる。

だが、未納者の増加がそのまま年金の破綻につながるわけではない。会社員や公務員などの厚生年金加入者も含めると、国民年金の未納者や未加入者の割合は全体の約2%。猶予や免除を受けている人は、全体の約9%。

公的年金保険は、保険料を納めていない人には給付されず、受給資格要件を満たした人にしか年金は支払われない。未納者や免除者が増えても給付に影響はなく、年金が破綻するわけではない。

十分な年金が受け取れない「低年金」状態になる可能性のある人が増えている。

参照:国民年金納付率が9年連続改善なのに「保険料が払えない人急増中」の謎と深刻


*****


私の新著にも書いたが、日本の65歳以上の世帯1世帯当たりの平均所得金額は334.9万円で、公的年金・恩給だけに限ると204.5万円だ。そして、全高齢者世帯の51.1%が公的年金収入だけで生活している。仕送りや企業年金、個人年金などを合わせても223.2万円だ。

つまり、全高齢者世帯の半分以上は公的年金204.5万円だけで生活している。ここに国民健康保険の患者負担を加えれば、世帯内に患者が1人いれば残る生活費が198.6万円となり、2人いれば192.7万円しか残らない。更にここから何パーセントかの消費税が天引きされている。

加えて、菅政権は75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引上げる対象を年収200万円以上にすることで合意した。75歳以上の窓口負担はいま原則1割で、年収383万円以上の人は3割。引上げは2022年10月から実施する。

こうした状況を鑑みれば、年金受給開始の時期を75歳まで繰り下げられるというのは、「高齢者の働く意欲を後押しする」というのは建前で、本音は「できるだけ払いたくない」というのが見え見えだ。

実際に、年金収入300万円の人の手取り額は、1999年には290万円だったのが、2021年は253万円と、37万円も減少した。公的介護保険制度の導入や様々な控除の廃止や縮小、復興税などが要因だ。健康保険料も上げ続けている。


社会保障制度とは、国民個人個人のリスクといえる病気やけが、障害、出産、老化、失業などの生活上の問題について、貧困を予防し、貧困者を救済し、生活を安定させるために、国家または社会が所得移転によって所得を保障し、医療や介護などの社会的サービスを給付する制度だとなっている。

我々の年収からは、所得税の他に個人住民税、社会保険料としての年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料などが差し引かれている。そして、消費税も部分的には社会保障制度の維持に充てられている。

しかし40年間、保険料を全額納付した場合にでも、65歳からもらえる老齢基礎年金は年額78万0900円、月額約6万5000円(2021年度)という国民健康保険の、その全額すら受け取れない高齢者が既に半数もいて、このコラムのタイトルにあるように、その予備軍が急増中なのだ。

これは、誰もが迎える老後の「貧困を予防し、貧困者を救済し、生活を安定させる」制度が、事実上崩壊していることを意味しないだろうか?


自分は十分な貯蓄があるから関係ない? ところが、政府の膨大な借金は民間が保有する資産がその信用の裏付けとなっている。つまり、政府が保有する金融資産とは「国民の保険料からなる年金積立金等」だとされているからだ。また、日本国債を大量に保有しているのは、国民の資産を預かっている年金、保険、銀行などだ。

下図5ページの中央部分、日本政府の過去の巨大債務がどうして解消されたかの但し書きを読んで頂きたい。ちなみに、右端は260%以上になる見込みだ。

参照図:戦前からの債務残高対GDP比の推移(出所:財務省)


上図では、ハイパーインフレーション発生、預金封鎖、新円切替、財産税、戦時特別補償税等による債務調整だとある。これは外貨で資産を「隠して」でもいない限り、どこにも逃げ場のない民間から政府への所得移転だ。

戦争だったから仕方がない? そう言えば、コロナ対策も「戦争だ」と呼んでいた。


こうした日本の悲惨な現状と、私が考える処方箋については以下にまとめている。


・新著案内:日本が幸せになれるシステム(著者:矢口 新、Kindle Edition:\500)
65のグラフデータで学ぶ、年金・医療制度の守り方

・New Book Guide:What has made Japan’s economy stagnant for more than 30 years?:
How to protect the pension and medical care systems (Arata Yaguchi: Kindle Edition \875)



---------------------- Seminar on Trading ---------------------
         毎日、数行! マーケット情報で学ぶ経済英語!
    ☆無料(参照&登録):https://www.mag2.com/m/0000142830.html
一週間のまとめはブログでも読めます:https://ameblo.jp/dealersweb-inc/
------------------------【 Dealer's WEB 】-----------------------


☆「矢口新の短期トレード教室」
転換点を見極め、利益を残す方法を学ぶ
http://www.tradersshop.com/bin/showprod?c=9784775991541










 

ブログ一覧に戻る