・1人の人間でもできること | 矢口新

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☆1人の人間でもできること

・それも短期間で

東京を含む大都市圏では昨年に続き2回目の緊急事態宣言がなされた。年初にも述べたように、コロナという角の曲がりより怖いのは、牛そのものが死ぬことだ。疫病はコロナだけではない。国民の死亡原因はコロナ死だけでない。コロナや今後の疫病に備えるだけでも、医療体制や社会保障制度の充実は不可欠なのだ。そしてそれを保証するものは経済力なのだ。

これは決して新型コロナウイルスの脅威を軽視しているわけではない。むしろ長期にわたる脅威だと認識しているからこそ、長期的に続けられる対策でなければ、弊害の方が大きいと危惧している。

私はそうした危機感をもとに、1冊の著書を上梓する予定だと述べた。現状では、1つの出版社が検討してくれているが、サブタイトルに「有権者1億人の教科書」とぶち上げたように、単に上梓するだけではほとんど意味がないと考えている。できるだけ多くの人々に判断材料を提供することで、日本の財政、社会保障制度への危機感を共有して頂くことが必要なのだ。

では、そうした危機感を共有してくれる人が少なからずいるとして、それで世の中が変わるだろうか? 消費税の撤廃が必要だと訴えることが、与野党に関わらず政治家が当選するための必要条件になりうるだろうか?

私は十分に可能だと見ているが、私を勇気づけてくれるコメントを東洋経済オンラインで目にした。最近相次いでいる大手IT企業への訴訟のきっかけをつくったのは、たった1人の女性だったということだ。

(以下に要点を引用)

「アメリカでは大手テクノロジー企業が反トラスト法(独占禁止法)違反で次々と提訴されるようになっている。この新たな"訴訟ウェーブ"の青写真を用意した反トラスト法研究者ディーナ・スリニバサン(40)は3年前、デジタル広告企業の幹部だった。仕事に退屈し、テック業界がもたらす荒涼とした未来に懸念を深めていた」

「学者としての経歴があったわけではない。が、デジタル広告業界の内部知識と、大量の書籍から取り入れた経済学の知見を組み合わせ、斬新な理論を打ち出す論文を書き上げた。フェイスブックは無料のサービスと引き換えに個人情報をどんどんと引き出し、消費者に害を及ぼしている――そんな理論だ。

2020年には別の論文でグーグルの独占を論じた。広告テクノロジーの独占によって、グーグルにはウォール街で違法とされている自己取引やインサイダー取引と同様の取引が可能になっている、という主張である。

スリニバサンの論考は反トラスト法の考え方を組み替えるものであり、発表されたタイミングもドンピシャだった」

「『彼女の論文によって、こうしたプラットフォーム企業の実際の行動と、それが競争に及ぼす重大な影響が非常に明解になった』とスタインバウムは言う。『規制当局に役立つ研究であり、業界の実情を熟知する人物だからこそ書くことのできた論文といえる』」

参照:GAFAが突然やたら訴えられるようになった事情


たった1人の女性が3年も経たないうちに、盤石に見えていた大手IT企業を脅かしている。見方によっては、国家よりも恐い相手に対しての戦いを挑んだのだ。

一方、私には敵がいるわけではない。1989年以降の税制改革で弱体化したのは、一般国民だけではないからだ。政府も企業も同様だった。つまり敵味方と分けるとすれば、圧倒的多数は私の味方で、今より不利になるのは「大儲け」しているごく少数の人たちだけだ。とはいえ、私はその人たちの人生にとっても、例えば大儲けの9割を税金で納める方が、結果的に彼らの幸福に近付けるのではないかと見なしている。

私が行っているのは、財務省、内閣府、総務省統計局、厚生労働省、日本銀行、e-Stat、国税庁、外務省、全労連、国連統計局、OECD、国際通貨基金、Tax Foundationなどが提供している図表を、世界の金融商品を投資対象として見てきた「業界の実情を熟知する人物」の目から解説することだ。

そして資金運用者の常として、それをポジションを取るという形で行動に変えることだ。その意味では、日本の社会保障制度を存続させるようにポジションを取ることは、私のライフワークとなるものだ。66歳にして、ようやく生きる意味らしきものを見つけた思いだ。

今回は、その後書きをご紹介する。

(前書きと目次は以下のURLから)
参照:角を矯めて牛を殺すな


☆日本の社会保障制度の崩壊はこうして防ぐ:有権者1億人の教科書

グラフで読み解く消費税と社会保障制度の関係:図表64枚


・あとがき:衰退から繁栄へ

本書を読み終えて、日本経済の現状に対する皆さんの認識は変わっただろうか? 日本の財政や社会保障制度への危機感を共有して頂けただろうか?

景気後退は所得が減ることで家計を、税収が減ることで国庫を痛めつける。このことは、社会保障の必要性が増し社会保障費が増大するのに、家計や国庫の負担能力が下がることを意味する。そして、そうした社会保険料の負担が増すことで可処分所得が減少し、ますます景気後退を進展させるというデス・スパイラルに至ることになる。このことは、経済成長が何よりも重要だということを示唆している。

私自身が本書に取り上げた64枚の図表を分析してみて分かったのは、1990年代以降、日本は規制緩和を押しすすめ海外に国を開いてきたが、国の経済成長にも国民の福利厚生に関しても全く役立たなかったということだ。また、日本の消費税と社会保険料の高さが個人消費を圧迫し、景気後退につながっている可能性が高いということだ。

しかし、社会保障制度はギリギリの状態で、社会保険料を下げることはできない。その点では、日本は追い詰められたと言える。


とはいえ、読者の方々が日本の未来を過度に悲観する必要もない。未来は変えられるからだ。歴史を紐解くまでもない。過去10年だけでもどれほど多くのことが変わっただろうか? より良い方向へだったとは言い難いが、トランプ大統領が4年間で変えてしまったことだけでも数多い。

1989年の消費税導入や、1997年の5%への税率引上げで、ほぼ瞬時にして繁栄から衰退へとトレンドが変わったように、消費税を撤廃すれば何年もしないうちに衰退から繁栄へと転換する可能性があるのだ。

1988年度の税収は50.8兆円で、税収に消費税が加わった1989年度から2019年度までの31年間の平均税収は50.7兆円だ。この間、日本経済は1.41倍(円建て)に、世界は4.42倍(ドル建て)に成長したことを鑑みると、こんなに分かりやすい衰退の原因は見当たらない。この歪んだ税制さえ変えれば、日本は良くなる可能性が高いのだ。仮に、日本が世界の標準並みに成長し、当時の税制でそのまま税収増があったとしたなら、2019年度の税収は224.5兆円に達していた。

私がそう思う理由をいくつか上げよう。

1、日本の経済規模は依然として世界3位
2、家計(自由業を含む)の純金融資産は2020年9月末時点で、1553兆円
3、民間非金融法人の純金融資産は2020年9月末時点で、243兆円
4、日本の海外純債権は2020年9月末時点で、386兆円
5、国内銀行109行の預貸ギャップが2020年9月末時点で、319兆円
6、年金資産(GPIF)は2020年9月末時点で、173兆円
7、皆保険制度が確立されている

これらは世界的には有数の評価対象となる。加えて、科学技術や文化、スポーツ、サブカルチャーといった分野でも、世界をリードできるものを持っている。

また、世界でESG評価が金融情報として欠かせない分野になってきており、株式や社債への投資のほか、銀行の融資でもESG評価を参考にするケースが増えてきた。ESG投資は世界の大手機関投資家がシフトを進めているものだ。
参照:Blackrock and Fidelity Are Betting Big On This $130 Trillion Mega-Trend 


そんななかで、ウォールストリート・ジャーナルが世界の上場企業5500社以上を、持続可能な測定基準の範囲をもとに査定し、2020年10月に公表した。そのトップ100に日本企業が16社選ばれた。1位はソニーだった。

1位、ソニー
10位、積水化学
13位、AGC
36位、キャノン
38位、ブラザー工業
44位、オムロン
46位、京セラ
56位、ウシオ電機
57位、JFE
59位、コニカミノルタ
66位、荏原製作所
77位、TOTO
79位、日立
82位、大林組
87位、東芝
97位、フジクラ

参照:Explore the Full WSJ Sustainable Management Ranking 

これは1つの見方、1つの評価基準に過ぎないとはいえ、世界の上場企業5500社中、1位だ。トップ100に16社だ。日本企業はまだまだ捨てたもんじゃない。そう思われないだろうか? これらのことは、日本にはまだ余力があることを示している。今なら間に合うのだ。


容赦なくすすむ少子高齢化は世界の先進国に共通の問題だ。世界のほとんどの国がコロナ禍というより、その対策禍で失業者が急増し、財政赤字と公的債務が膨れ上がった。加えて、温暖化による異常気象の続発、今後も予測される疫病禍は世界共通だ。世界的に貧富格差も広がった。コロナ対策として集会を禁止しているにもかかわらず、世界各地で市民蜂起が起きている。これらは世界的な治安の悪化と地政学的リスクが高まることを暗示している。

日本はそれらの諸問題に、世界で最も脆弱な財政を持つ国として立ち向かわねばならない。これらが大きな悲劇をもたらす前に、残された時間は余りないかも知れない。リスク対策が急がれる。

MMT (Modern Monetary Theory) のように、状況次第では財政赤字など気にする必要はないとする説がある。仮にそうであれば、財政赤字削減に必要な税収はいらないことになる。そうであれば、危機時には全面減税し、財政資金はひたすら印刷すればいいのだ。

これはMMTに匹敵する極論だが、消費税を撤廃しても失うものは多くない。過去のデータは、景気拡大、税収増を強く示唆している。今の日本に必要なのは、1989年度までの税制に戻すことだ。道筋さえつければ、トレンドは意外に簡単に変わるものなのだ。

(以上)


前回の「角を矯めて牛を殺すな」へのご意見、応援ありがとうございました。
今後ともご意見、応援を頂ければ幸いです。

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