・日本の次期首相と消費税 | 矢口新

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・日本の次期首相と消費税

自民党は9月14日投開票の総裁選で菅義偉官房長官(71)を第26代総裁に選出した。菅氏が有効投票数534票の7割にあたる377票を獲得。岸田文雄氏は89票で2位、石破茂氏は68票で3位だった。

菅氏は「将来的なことを考えたら行政改革を徹底した上で、国民にお願いして消費税は引き上げざるを得ない」と話していた。少子高齢化を踏まえ、社会保障の財源には必要だと訴えたという。

2位となった岸田氏は「新型コロナウイルスとの闘いの中で消費増税するのは難しい」と主張したが、社会保障の新たな財源などを見極めた上で「必要なら引き上げも考える」とも話し、具体的な時期は触れずに将来的な税率引き上げに言及していた。

3位の石破氏は「消費税が低所得者に負担になっているのは間違いない」と分析しながらも、消費税は「社会保障をどのように改革するかとセットで論じないといけない」と提起していた。

自民党の総裁は日本の次期首相だ。総裁候補だった3氏は異口同音に、消費税が経済に与える悪影響を認識しながらも、社会保障制度維持のためには必要だと考えていたことになる。つまり近未来の日本は、誰が首相になっても消費税は必要だ、時期が来れば増税は避けられないという政策のもとに運営されることになる。


ここで私が疑問に思うのは、景気が悪化しても増税さえすれば社会保障制度が維持されるという考え方だ。これは、消費税率を引き上げれば景気が悪化しても総税収が増えるという間違った認識をもとにしている。でなければ、総税収が減っても、消費税収さえ増えれば社会保障制度が維持できるという、およそ非科学的な対象に消費税がなっていることになる。もしかすると、消費税を論理的に取り上げることは、日本政界、あるいはマスコミやエコノミストのタブーなのかも知れない。

幸い、私は政治家でも、報道関係者でも、エコノミストでもない。どの政党や組織にも所属していない自由に発言できる立場だ。そこで、日本の財務省と内閣府の資料だけを味方に、社会保障制度の財源として神格化された消費税を、我々が生きている地上に引き下ろしたい。


財務省のホームページには「日本の財政を考える」という項目があり、「財政関係パンフレット・教材」が掲載されている。そのPDF資料をもとにして話を進める。
参照:日本の財政関係資料(令和2年7月)

経済規模や成長率については、内閣府の年次GDP成長率、実質時系列データ(CSV形式:5KB)、名目時系列データ(CSV形式:5KB)を必要に応じて参照して頂きたい。
参照:国民経済計算(GDP統計)


参照資料:第1部我が国財政について(全16ページ)

1ページ目に令和2年度一般会計予算の「歳出内訳」が出ている。ここでの当初予算の「社会保障」費は35.9兆円となっている。これが第2次補正後予算では40.5兆円となる。ここでは、コロナ禍により景気が悪化すれば、社会保障費が増えることを示唆している。このことは、消費増税で景気が悪化しても、社会保障費が増えることを暗示している。つまり、社会保障制度の財源としての消費税は、逃げ水のようにいつまでたっても「不足」することになる。


2ページ目は補正予算によって増える歳出57.6兆円は、公債(国債)発行による借金で賄うということを示している。


3ページ目は一般会計における歳出・歳入の状況で、赤の折れ線グラフの歳出と、青の折れ線グラフの税収との差額が財政赤字と分かるようになっている。その赤字を棒グラフに見られる国債発行により埋め合わせている。つまり、借金を積み上げている。

ここで注目して頂きたいのが、消費税を導入した翌年の1990年度の税収60.1兆円だ。次の注目点は消費税率を3%から5%に引き上げた1997年度の税収53.9兆円だ。この間の名目GDPは420.4兆円から533.4兆円に増加(前年度比伸び率は8.5%増から0.9%増に減速)したが、税収は1割以上減少した。

これで消費税が社会保障制度の財源となるのが事実ならば、他の歳出を急減させることがセットである必要があるが、そうではないために財政赤字は急増する。

もっと深刻なのは、1997年度の名目GDP533.4兆円が、2016年度に計算基準の見直しで30兆円を上乗せして536.9兆円となるまでのピークとなったことだ。

つまり、消費税導入後にピークをつけた税収は景気減速を受けて減少し始め、5%に引き上げ後はついにマイナス成長に至り、税収も減り続けたことになる。

もっとも、名目GDPも総税収も2009年を底に増え始めるが、これは資金供給量を1997度時点の11.2倍としたことが大きい。現状の資金供給量は名目GDPよりも大きいので、カネで買った成長と言えるかも知れない。しかし、ここでも景気と税収の正の相関関係が示されている。

右から2番目の2019年度の税収60.2兆円は58.4兆円になったと報道され、2020年度は63.5兆円どころか、2019年度を下回る可能性が高い。ここでも2019年度は消費増税、2020年度はコロナ禍による景気後退が税収減につながっている。


その後も興味深い資料が続くが、8ページ目の(参考)一般会計税収の推移には注目して頂きたい。

これで分かるのは、消費税は確かに安定財源だ。景気が良くても悪くても安定している。このことは、1997年度以降の景気縮小期にも同額を天引きし、家計や企業経営の大きな負担となってきたことを示している。そして、今や日本財政の最大の財源は消費税となった。

このことは実は恐ろしいことを示唆している。1ページにあるように、社会保障費は40兆円ほどあるが、今後景気が仮に良くなっても安定かつ最大の財源である消費税収は20数兆円止まりである可能性が高いことだ。

この図が他にも示唆していることは、消費税と所得税、法人税とがあちらを立てればこちらが立たずのトレードオフの関係にあることだ。これは消費税と景気とがトレードオフの関係にあることが大きい。

また、日本の総税収の実質的なピーク2018年度60.4兆円のところを見て頂きたい。その下の法人税収12.3兆円の部分だ。この年はアベノミクスの成果が最も大きかった時で、日本企業の売上、利益共に過去最大だった。にもかかわらず、法人税収は1989年度の19.0兆円に遠く及ばない。理由の1つに法人税率の引き下げがある。

なぜ法人税率を引き下げたのかの理由は問わない。しかし、実際に起きたことは、1989年度から欠損法人(赤字で税金を納めない企業)が急増、加えて、日本企業の国際競争力も年を追って低下していったことだ。若い人たちは知らないだろうが、1989年度以前の税制下の日本は「政治は2流だが、経済は1流」、あるいは「ジャパン・アズ・ナンバー1」とまで呼ばれていたのだ。


11ページも見て頂きたい。日本政府の社会保障支出はOECD平均を上回る程度だが、それ以外の支出は32カ国中31番目と低い。これは民主党政権下で行われた「仕分け」が無理難題であったことを示唆している。

その理由が分かるのは租税収入のところだ。日本は29位で収入が非常に少ない。また、日本以下のところは財政均衡状態に近く、徴税を多くする必要性が少ないことも分かる。一方の日本はOECD諸国中最大の財政赤字を抱えている。


15ページはその結果としての債務残高の国際比較、16ページは保有資産と相殺した純債務残高の国際比較だ。これは本日の趣旨からは外れるので、ご自分で確認して頂きたい。

ちなみに、1997年以降の日本経済の縮小を、アジア通貨危機やリーマンショックなど海外要因に見る人たちが多いが、その間も海外は3倍ほどに成長、中国などは10倍以上にも成長してきた。日本は戦後最長とされる「いざなみ景気」の極めてゆっくりとした回復、戦後2番目のアベノミクスでの回復で、ようやく1997年度の規模に戻れたに過ぎない。


要約すると、3ページの図からは、税収の実質的なピークが1990年度であることが分かる。つまり、歴代の政府は限られた収入をやり繰りすることばかりを考えてきたことになる。そして、税収を増やすには経済成長が必要なのに、消費増税を続けてきたのだ。

そして8ページの図から分かるのは、消費税が景気を後退させ、他の税収を減らすことにより、総税収を減らしてきたことだ。このことは、社会保障制度を脅かしているのが、実は消費税だということになる。

こうした図の解釈が正しいならば、現状の日本は、また近未来の日本は菅新首相になっても絶望的だということになる。

一方で、消費税と景気後退、税収減とに強い相関関係があるのなら、日本経済の処方箋は簡単だ。

結論を述べよう。社会保障制度を維持するためには経済成長が必要だ。そのための最も有効だと思われる手段が消費税の撤廃だ。そして、所得税、法人税を累進課税することで税収増を図るのだ。難しいことはない。税収が増え、財政がほぼ均衡していた。そして、日本そのものが輝いていた1989年度以前の税制に戻すこと、ただそれだけのことだ。政治家のやる気1つで、日本は変わると思う。



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