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☆短距離走とマラソン

・大統領が消えた(The President is Missing)

ビル・クリントン元米大統領が、プロの作家と共著で記した同タイトルの本を数カ月かけて読んでいる。巣ごもりのおかげで、連休明けまでには読み終えられそうだ。サスペンス仕立てで、米政権の架空の内幕や、イスラエル、ドイツ、ロシアなどとの関係が個人名以外は実名で出てきて、興味深い。

主題はテロリストとの戦いで、彼らがコンピューターに仕込んだウイルスが作動すると、米国内のインターネットに繋がったすべてのコンピューターが完全に破壊され、官民の資産、債務を含むあらゆるデータが消され、電気、水道から、自動車、家電に至るすべてのインフラが機能を失うというものだ。一般人の生活から軍隊までが機能不全となるので、大統領は6、7人の安全保障関係者以外には機密を漏らさず、深い森と湖に囲まれたシェルターで、ハッカーなどの専門家たちとウイルスの無力化を進めている。

今朝読んだところは、ウイルス作動まで数時間に追い詰められた状況下で、大統領と専門家たちとが、何か見落としはないか、他の対策はないかと話し合ったところだ。万策尽きたと投げ出すことは許されないので、大統領は「起動時間まで、全米のすべてのインターネットを遮断し、その間にウイルスの無力化ができないか?」と尋ねた。

専門家たちのリーダーは「そうなると、米国の一般人の生活から軍隊までが確実に機能不全となる。一方で、ウイルスを無力化できるという保証はない。また、どれだけの期間を要するかも分からない」と答える。

大統領は「すべてのコンピューターが破壊されると、ウイルスはどうなる?」と聞く。「がんで死ぬ時、肉体と共にがん細胞も死ぬのと同じで、後には何も残らない」。

まだ読んでいる途中なので、この後の結末は分からないのだが、こうしたコンピューターウイルスへの対策と、コロナウイルスへの対策が似ているのではないだろうか? 世界の大半の政府はヒトの交流、経済活動、生命活動を封じることで、ウイルスの鎮静化を図っているが、「一般人の生活から軍隊までが機能不全となる。一方で、ウイルスを無力化できるという保証はない。また、どれだけの期間を要するかも分からない」のだ。


・集団免疫の獲得が不可欠

コロナウイルスの収束には集団免疫の獲得が不可欠で、それには3~5年かかるという専門家の見方があるので部分的に引用する。

(引用ここから、URLまで)

「新型コロナウイルス感染症は、封じ込めなどによって一部の地域で部分的に収束したとしても、人の移動を前提とした現在のグローバル資本主義社会においては、他の地域からの持ち込みによって再燃するリスクを常に抱えることになる。そのため、封じ込めによる全世界的な収束は実現困難で、集団免疫を獲得する以外に収束させる方法はない。

集団免疫とは、全人口の一定数が感染症に対して免疫を有することで、1人の感染者が新たに何人に感染させるかという「基本再生産数」を1未満にし、感染拡大を抑える戦略である。新型コロナウイルス感染症に当てはめると、基本再生産数が2.5程度とした場合、全人口の少なくとも60%程度が免疫を保有する必要がある。

集団免疫を獲得するには2つの方法が存在する。ワクチンと自然感染である。ワクチンは比較的安全かつ迅速に免疫を付与することが可能で、方法としては最適だろう。ただし、順調に進捗したとしても開発には12カ月以上必要とされ、広く投与可能となるにはさらに時間がかかる。

また、ワクチン開発には安全性の問題やウイルスの変異による効果減弱化の懸念がある。ウイルスの感染や増殖を防ぐ「中和抗体」を投与してもウイルス量がすぐに低下しない患者も報告されており、ワクチンではより強い中和抗体を作り出すことが必要となる。このためワクチン開発は難航することも予想される。

もしワクチン開発に失敗した場合はどうなるか。その場合にとり得る方策が自然感染である。自然感染は意図的に人々を感染させて集団免疫を獲得する方法であり、感染爆発や重症患者増加による医療崩壊リスクを常に抱えることになる。

そのため、この戦略では重症化や感染爆発をいかに抑えるかが肝要だろう。自然感染の戦略をとった場合、先進国において収束まで早くても2年から3年、長期化すると5年以上は掛かるという試算もあり、長期化を覚悟する必要がある。

以上をまとめると、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)は、1年から5年程度の部分的な収束を経た上で、ワクチンもしくは自然感染による集団免疫が成立した時点で収束する、というのが合理的な道筋となる」

「集団免疫の獲得に失敗するシナリオも念頭に置く必要がある。その上で3つのシナリオを提示したい」

「結論としては、いずれのシナリオにしても少なくとも1年から2年、長期化すると5年程度もしくはそれ以上の期間にわたり、移動制限などの措置を取らざるを得ない。もはや新型コロナウイルス感染症が拡大する前の生活はそう簡単には取り戻せず、今後の企業活動についても大きな戦略の転換が求められることになるだろう」
参照:新型コロナ収束まで3~5年? 集団免疫の獲得が条件


封鎖は、「他の地域からの持ち込みによって再燃するリスクを常に抱えることになる。そのため、封じ込めによる全世界的な収束は実現困難で、集団免疫を獲得する以外に収束させる方法はない」。ワクチン投与も集団免疫を獲得する手段だ。BCGなど他の疫病のワクチン投与に否定的な国があるのは、そうした管理感染にもリスクがあるからだ。

一方で、封鎖そのものの効果は疑問だ。「The President is Missing」でも、「確実に機能不全となる。一方で、ウイルスを無力化できるという保証はない。また、どれだけの期間を要するかも分からない」のだ。こうした機能不全が確実なのは、経済活動を止めヒトの交流を機能不全にすることにより、ウイルスの機能を殺そうとしているからだ。旧来の東洋医学がヒトの持つ治癒力に期待する一方で、西洋医学は患部を丸ごと切り取ることに似ている。

封鎖とコロナ禍による死者数の増減とに相関関係はないという調査もある。

「死者数と封鎖までの日数の相関係数は5.5%だった。この低さは、以前私のもとで働いていたエンジニアたちなら『関連なし』と結論付けたことだろう。

高死亡率だと喧伝されているにも関わらず、スウェーデンの死亡率はフランスと同程度で欧州諸国での中間に位置する。世界最悪のベルギーやイタリア、スペイン、英国よりは良く、フィンランド、デンマーク、ノルウェーよりは悪い。スウェーデンの死亡者数の半数は、介護施設の老人たちが占めている。 我々はスウェーデンを残忍に非難するより、その方式が成功することを応援するべきだ。彼らの成功は、米国の封鎖政策は効果がないばかりか、経済的に破滅的であるなど、多くの側面で間違いであることを証明することで、今後の修正方法を指し示す可能性がある」
参照:Do Lockdowns Save Many Lives? In Most Places, the Data Say No 

参照:新型コロナウイルス感染の現状


これらの調査で明らかなのは、ワクチン投与を含め、結局は集団免疫獲得を待つしかないということだ。一方で、封鎖は集団免疫獲得を遅らせることになる。リスクのある自然感染を防ぎつつ、ワクチン投与による管理感染での集団免疫獲得を狙うものだからだ。とはいえ、封鎖は経済活動を機能不全にすることなので、この悪影響は確実だが、リスクのある自然感染を防ぐ効果は証明されていないのだ。

一方、ニューヨーク州のクオモ知事は封鎖の延長を主張しているが、ここでも封鎖の効果が疑問視されるデータが出ている。

「ニューヨークでコロナウイルスに感染して新たに入院することになった人々の大半は退職者か失業者で、公共交通を避けていることが、新たな調査で判明した。厳しいソーシャル・ディスタンシング(人間同士が2メーター以内には近付かない)を6週間続けても重症化が避けられないとの最初の見解となった。入院患者の37%が退職者で、46%が失業者だった。ほぼ4分の3が51歳以上だった。わずか17%だけが勤労者だった。また、日常生活で公共交通を利用しているのは4%に過ぎなかった」
参照:Most New COVID-19 Patients in NY Not Working, Older: Survey


・スウェーデン、自然感染による集団免疫獲得か

一方、上記のスウェーデンは自然感染による集団免疫を獲得しつつあるという。

「コロナウイルス・パンデミックの欧州全土への広がりを受け、近隣諸国が地域の境界線や学校、バー、ビジネスなどを閉鎖するなかで、スウェーデンは潮流に逆らって、規制を可能な限り抑えた通常の社会生活を営み続けている。その戦略は、年配者といったハイリスク集団を防衛する一方で、ウイルスへの露出をいくぶん許すことにより、一般大衆の中に免疫がつくられることを狙ったもので、非難の的となっている。専門家のなかには、その戦略を大衆の健康を弄び一定の確率で死者がでるロシアンルーレットになぞらえるものがいる。しかし今、同国の主任疫学者はその戦略が機能し始めたようだと述べた。そして、数週間のうちにはストックホルムで『集団免疫』獲得に至るかも知れないとした」
参照:Sweden resisted a lockdown, and its capital Stockholm is expected to reach ‘herd immunity’ in weeks


とはいえスウェーデン方式は、ロシアンルーレットに例えられているように評判が悪い。世界の大多数が正しいと信じていることを否定していることになるからだ。「スウェーデンの成功は、米国の封鎖政策は効果がないばかりか、経済的に破滅的であるなど、多くの側面で間違いであることを証明する」ことも、各国政府が認めたくない理由だ。

また、スウェーデン第1四半期のGDPは前期比0.3%減で、前期の0.2%増から悪化したことも、封鎖しなくてもマイナス成長などと揶揄されているが、近隣諸国が大幅なマイナス成長の時に、スウェーデンだけがプラスを維持することは困難だ。ちなみに、スウェーデン3月の失業率は7.1%と、2月の8.2%から低下した。

封鎖をいち早く宣言した国や知事が、その毅然とした態度を称賛され支持率を上げている。一方で、長期的な視野による慎重な対策は優柔不断と見なされ、無能力とまでされている。

そうした世界中からの非難に対し、スウェーデンのイザベラ・ロビン副首相は「スウェーデンが真面目にコロナ対策を採っていないという 'Myth' (神話、誤った通念)」に対して、悲痛な趣で反論した。
参照:Coronavirus: 'Myth' that Sweden has not taken 'serious steps'


Covid-19が恐ろしい感染症であることは疑いがない。だからこそスウェーデンは、当初から長期戦で臨んでいた。「新型コロナ収束まで3~5年? 集団免疫の獲得が条件」との理解と同じだ。同副首相は、短距離走とマラソンの違いに例えている。ゴールが近ければ無呼吸、無酸素運動で向かえばいいが、ゴールが見えない状態では「スースー、ハッハ」とペースを崩さずに走り続けるしかない。周りが全力疾走している中で、スウェーデンは独自の緩いペースを維持している。無能に見えるのも致し方ない。

安倍首相が2月末に学校閉鎖を表明した時は、「向う2、3週間が勝負」だとされていた。ところが、実際には2、3カ月が経過した。そして、専門家によればゴールは3~5年先だとも言われている。自粛を続ければその間の国民生活の機能不全は確実だが、結局は集団免疫獲得を待つしかない。しかも、その機能不全により集団免疫の獲得も遅れ、ゴールが遠のいてしまうのだ。

現実には、誰も無呼吸でマラソンは走れない。理不尽なコーチが無理強いしても、生きている我々は、息をし続けるしかないのだ。ちなみに、カミュの用いた「不条理(理不尽)」は 'absurd' の日本語訳だ。




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