昔ならばチャートブックで見ていましたが、現在ならばインターネットやパソコンのソフトで、株価チャートをカンタンに表示することができます。
なおかつ、移動平均線など好みのデータを重ね合わせることも可能です。
ところが、昔も今も、チャートを手描きしている実践者がいます。
私も、大きな用紙に手描きしています。
チャートの【タテヨコ比】にこだわる理由があるからです。
コンピュータが表示するチャートは通常、ヨコ方向の「期間」が決まっています。
タテ方向は表示サイズが決まっていて、その期間の値動きに応じて縮尺を変更します。
下の図を見てください。
左のチャートでは、ジグザグしながら少し上昇している様子を、決められた枠にうまく収まるように表示されています。
ところが、そのあと大きく上昇すると、表示する価格の範囲が広がります。でも、表示する枠の大きさは変わりません。
よって、右のチャートのようにタテ方向を縮めるのです。
チャートは、タテ軸(価格)とヨコ軸(時間、日柄)の2つだけの要素で成り立ちます。
そして、その2つでトレンド(傾向)や、トレンドの変化を見ます。
視覚で捉え、感覚的に判断します。
それなのに、タテ軸の縮尺を、表示する都合だけで変えてしまったら……感覚的に捉えるうえで問題です。
例えば顔写真のタテヨコ比を変えてしまったら、丸顔なのか面長なのか判別できません。それと全く同じことです。
値動きを図にして、ひと目でわかるようにしたのが株価チャートです。
とても完成度が高く、パッと見て、素直に脳にインプットします。
だからこそ、理屈に合わない部分があってはいけないのです。
勢いで、もう少し突っ込んだ議論を紹介しましょう。
私は、「FAI投資法」という低位株投資(安値圏にある銘柄を調べて、分散投資する手法)をやっています。長期間のトレンドを見るので、月足を利用するのですが、前述したように、大きな紙に手描きしています。
どんな銘柄も同じ規格、1ミリ=1円です。
「上がっているか」「下がっているか」を見るだけなら、チャートにする必要はありません。チャートにした以上は、同じ感覚で眺めて銘柄別に比較できなければダメです。単独でも見て、トレンドの勢いをサッと感じ取れるものでなければなりません。
ところが、安値の100円でも1ミリ=1円、高くなって1,000円近辺でも1ミリ=1円……例えば、同じ10円幅は、100円に対して10%ですが、1,000円に対してはわずか1%です。対数グラフにするべきだ、なんてツッコミがありそうです。
ただ、今までの経験から違和感がないのです。
おそらく、そういった問題を承知して、持ち合わせた能力で「補完」して見ているのでしょう。少なくとも、例えば同じ500円前後で、銘柄ごとにタテ方向の縮尺がちがう、なんてことはありません。安心して値動きを眺めることができます。
ここまで、一般的な時系列チャート、つまり、どんな値動きでもヨコ方向の変化は同じというシンプルなものについて考えてきましたが、「非時系列チャート」という特殊なものもあります。
株価変動を読む目的で、一定の条件を満たさない場合は足を描き足さない、というものです。
例えば「新値足」とか、アメリカの「ポイント・アンド・フィギュア」とか。
そもそも、マーケットでバラバラに売り買いがぶつかった結果を、あたかも連続している事象のように表現するのがチャートです。この時点で、決して合理的ではない「加工」が施されています。
それなのに、さらに加工する行為は、私の感覚で“やりすぎ”です。
タテヨコ比の規格をそろえた、可能な範囲で大きなチャートを、感性豊かな人間として純粋に眺めて考える──これが理想です。
