連載「相場のこころ トレードの本質」その21 | 中源線研究会

確率について考える
 
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扁桃腺のひどい炎症で入院したことがあります。「息ができなくなる」恐怖を感じたからですが、ステロイド剤の点滴でラクになったので「退院する」と言ったら担当の医者が面白い人で、「勝率は五分と五分、帰りたければ止めないよ~」なんて……結局、すぐに退院したのですが、確率の問題ではなく、再び悪化して苦しい思いをする可能性があるか否かが重要で、入院したのだから“念のため”にもう少し滞在するって発想が大切だったのでしょう。
帰り道、タバコを買って喫煙所でプカプカ、その後も大丈夫でしたが……笑。
 
値動きに対する対応をルール化すると、過去のデータから確率が出ます。
未来の価格変動に対しては単なる「期待値」ですが、機械的に売買するルールを決める、つまり、ひとつの「規格」を設けた場合、統計から導き出された確率に期待して売買を実行することになります。
 
書籍『新版 中源線建玉法』には、中源線の利用について、
「規格化された売買法の確率を利用する忠実な実行」
これが基本だと記されています(第一部 解説)。
 
売り買いを細かく決めるのですから、当然です。
 
ちなみに、基本に対しては応用で、書籍は応用の分類にも言及していますが、これについては次回で述べることにして、現実では、「基本」にもかなりの幅があると考えるべきです。「規格化」されていても、実際には「裁量」に相当する部分が残っているという意味です。
 
銘柄を何にするか、資金をいくら用意するか、各銘柄の数量をどれくらいのサイズにするか、等々。
 
特に、スタート時点で混乱が起きやすいようです。
中源線ならば、中源線のルールを覚えた、理屈だけでなく感覚でも納得した、よし始めようという段階で、経験がないために見えていない部分をどこまで想像できるか、ほかの分野の経験を持ち込んで適正な範囲を設定しておくことができるか──こういった現実の問題が意外と重要です。
 
最初からカンタンに儲かると計算してスタートしたら、たまたまの連敗。で、その手法の良いところが見えないまま悪い評価を下してしまう……もったいないケースです。
 
最初はおっかなびっくり、少ない数量でスタートした。これは正しいわけですが、数回やったら思ったよりもうまくいくので、「よし!」とばかりにポジションサイズを膨らませたところ予想外の大負け……これまた、もったいない。
 
どちらも、“相場あるある”です。
 
銘柄を選ぶときも、個々の負けを嫌うあまり、目先でうまくいっている銘柄を選んだところ、とたんに連敗を食らったとか……。逆に、負けが続いている銘柄を選んでみた、「一陽来復」なんて流れを安易に想像したのに、さらに負けが続いたとか……。
 
いわゆる勝率が、50%でも、60%でも、あるいは70%でも、「常に100%」でない限りは必ず負ける場面があります。だから、数字ではなく、「負けることもある」という認識が求められるのですが、現実的なそなえが、つい欠落してしまうのが相場の世界です。
 
 
林 知之

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