・グローバリゼーションと社会主義的政策の「奇妙な?」同居 | 矢口新

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☆グローバリゼーションと社会主義的政策の「奇妙な?」同居

OECD35カ国で全体的に低下している生産性、所得の伸びの鈍化、資産格差の拡大が懸念されている。これらが、デフレ圧力となり、経済成長率を押し下げるのみならず、政治の不安定や地政学的リスクにもつながっているからだ。

ブレグジットや米大統領選、イタリアの国民投票、フランス大統領選で取り沙汰されたことは、ポピュリズムの台頭だが、グローバリゼーションと民族主義の対立とも指摘された。なぜ、大衆がグローバリゼーションに反対するのか? それは、所得の伸びの鈍化や資産格差の拡大につながっていることが大きい。

ポピュリズムとは、大衆迎合主義と訳されるが、同じ対立軸で捉えると、官僚主導あるいは理念主導の国際協調主義と、国民の懐具合を含めた民衆主義の対立だとも言える。


グローバリゼーションは、保護主義的な政策を取り払うことにより、製品やサービス価格を押し下げ、消費者にメリットがあるとされた。つまり、消費者物価が下がることで、消費が拡大し、経済成長、企業収益増、所得増につながるとされていた。

日本の場合は、そこに消費税を導入し、3%、5%、8%と税率を上げ続けたことで、消費者物価は下がったが、消費は伸びず、経済成長、企業収益増、所得増の芽を摘むことになった。経済成長、企業収益増、所得増が思うように伸びないと財政も悪化する。日本の失われた20数年は消費税導入から始まっている。日本の税収のピークは消費税3%導入の翌年1990年度で、名目GDPのピークは3%から5%に引き上げた1997年度だ。
参照:財務省・一般会計税収の推移


また、グローバリゼーションは、柔道やレスリング、ボクシングといった格闘技の体重制限を取り払う効果を持つために、中・軽量級のプレイヤーたちは軒並み失業することとなった。そして、それら格闘技は大半が大味な、力勝負で決するようになった。

日本の企業倒産件数は2000年度まで増加、以降は減少しているが、超緩和的政策を含む、政府主導の支援のためだ。いわゆる、ゾンビ企業が増加した。
 

国税庁のホームページによれば、2015年度分の法人数は264万1848社で前年度から2万5363社(+1.0%)増加した。また、全体の法人数から、連結子法人の数を差し引いた263万0436社が、徴税対象となっている。

うち、利益計上法人が93万9577社、赤字決算の欠損法人が169万0859社と、欠損法人割合が64.3%となっている。これでも6年連続で減少し、ピークだった2009年、10年、両年度の72.8%からは大きく低下した。
参照:国税庁・平成27年度分「会社標本調査」調査結果について


税金を納めない欠損法人が50%を初めて超えたのが1981年度で、以降は2、3の例外年度を除き、50%以上で推移している。また、欠損法人が急増し始めたのは、消費税導入の翌年1990年度からで、ここにも消費税が日本経済を痛めつけている兆候が見て取れる。
参照:財務省・法人数と欠損法人割合の推移


グローバリゼーションは、消費者物価が下がることで、一般国民にも、経済成長にも貢献すると考えられてきた。ところが、日本は消費税を導入したことで、消費そのものを低迷させた。ここで、日銀が望むように消費者物価が上昇すると、グローバリゼーションの効果をも打消し、さらに景気は低迷する。つまり、日銀の政策は不況下のインフレを意味するスタグフレーションが狙いだということになる。日銀は、マイナス金利政策は銀行経営を圧迫すると言い、金融庁は、地銀の6割が赤字になると言ってのけた。

日本だけがおかしいのではない。ギリシャは不況下に財政引き締めを行い、今は国家存亡の危機にあるといっても大袈裟ではない。ドイツを除く他のEU諸国も、高失業率にも関わらず、緊縮財政を続けている。

では、日本やEUが国民の生活を犠牲にしてまで追い求めているものは何か? それが官僚主導あるいは理念主導の国際協調主義なのだ。ポピュリズムと言われているものは、そういった国際協調主義、あるいはグローバリゼーションに対する民衆の痛みの声だ。

グリーンスパン米元連銀議長は、「ポピュリズムとは、資本主義や、社会主義、共産主義といった、構造的な経済哲学ではなく、一般大衆が、自分たちを託せるリーダーに立ち上がって貰い、苦痛を和らげて貰いたいとする、苦痛の叫びなのだ。」と語った。
参照:Greenspan: 'Cry of pain' around the world led to Trump and Brexit victories


米元連銀議長がそう語るように、株価指数が最高値を更新し続け、住宅不動産市場が完全回復している米国でも、長らく米国を支えてきた中産階級が没落している。その層が選挙前のトランプ大統領を支持した。ニューヨークやサンフランシスコ、ロスアンゼルス、ボストンなど人気都市は、住宅価格、家賃の値上がりで、富裕層と、保護を受けることができる貧困層だけが住むことができるようになっていると報道されている。
参照:高騰するアメリカの住宅と、家を失い漂流する中流階級たち


グローバリゼーションが広がり続ける貧富格差の主因であり、成長率鈍化の大きな要因だ。グローバリゼーションは、市場経済主義だと考えられてきたが、現状の課税システムのままでは、必然的な結果として、世界は国家社会主義的な方向に向かっている。例えば、マイナス金利政策という、借り手が貸し手から金利を受け取るなどということは、市場経済ではあり得ないことで、国家社会主義的な圧力の象徴だと言える。

米国ですら、超大企業以下の大企業の生産性は伸び悩み、従業員の所得格差も広がり続けている。2009年から8年以上続けている巨額の量的緩和も、市場経済主義では考えられない規模の国家による市場介入だ。

なぜ、グローバリゼーションが国家社会主義と同居するのかは、日本では企業の半数以上が30年以上も税金を納めないでいられることでも明らかだ。いわゆる負け組があまりに多いために、国が支えないと破滅的な悲劇となるからだ。

とはいえ、国は国民の資金でしか支えることはできない。マイナス金利政策に先行するほぼゼロ金利政策では、預貯金、年金、保険などからの金利収入がほぼなくなることで、赤字企業の金利負担を軽減してきた。また、高金利諸国のファイナンスを助けてきた。マイナス金利政策下では、それが加速している。

グローバリゼーションで恩恵を受けているのは超がつくような一部の大企業だ。また、その器を利用して資産を急増させた一部の富裕層だ。市場経済では、弱肉強食は避けられないと考えられてきたが、クジラが小魚を群れごと飲み込む様を見れば、小魚を国家が社会主義的に守るしかない。しかしクジラが、国家や国際協調主義がつくり上げたシステムを利用し、そこまで巨大化したのは、小魚を飽食できたからだ。国家がそのクジラを放任する一方で、小魚から集めた資金で小魚を守るのでは、いずれ国家自体がクジラに飲まれてしまう。

一部の企業家が、会社を収益マシーン、あるいは容器と考えている様に、一部の超富裕層は、国家を収益マシーン、あるいは容器に過ぎないと考え始めているように思える。

グローバリゼーションを本来の形で機能させ、市場経済を取り戻すには、グローバリゼーションで恩恵を受けている企業や個人に大幅課税し、それをグローバリゼーションの被害者に分配させるしかないと言える。消費税はゼロにし、超大企業、超富裕層への大幅課税だ。現状の富の偏在を鑑みると、それで財政や社会保障費の問題は解決する。

大幅課税により、彼らが国外に出て行っても問題はない。それは彼らが国家を収益マシーン、あるいは容器に過ぎないと考えていた証であるし、優れた会社、優秀な人材はどこにでもいるからだ。

 


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